2021 Fiscal Year Annual Research Report
新規母性レチノールと胚性レチノイン酸合成系による受精卵の発生運命決定機構の解明
Project/Area Number |
21K14961
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川合 智子 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (70839654)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 母体栄養 / 発生運命 / レチノイン酸 / 母性因子 / 胚性因子 / 受精卵 |
Outline of Annual Research Achievements |
栄養環境が不完全な場合、遺伝的繁殖能力を十分に発揮できない。血中レチノール(不活性型ビタミンA)が低値なマウスの解析から、エピジェネティック異常による排卵抑制だけでなく、成熟卵の卵割異常が観察された。本研究は、レチノール蓄積が初期胚発生に必須な新規母性因子なのか、レチノールから合成されるレチノイン酸(RA;活性型ビタミンA)がどのように初期胚の発生運命を決定しているのか解析した。 レチノール蓄積量の異なる成熟卵モデルを作出して発生への影響を調べた結果、蓄積量が低い成熟卵は2-4細胞期胚への発生率が有意に低下した。RA合成酵素ADH/ADLHは、2細胞期胚で急激に増加し、受精卵をRNA polymerase2阻害剤で処理すると有意に抑制された。同様に、既知の母性因子:脂肪酸の役割を解析した結果、脂肪酸の過剰蓄積は、活性化ミトコンドリアの局在異常と活性酸素量増加による酸化ストレスをおこし、2-4細胞期胚への発生を有意に阻害した。ミトコンドリアの転写やミトコンドリア遺伝子、抗酸化システムに関わる因子も2細胞期胚で急激に発現誘導された。これらの成果から、母体の栄養環境(レチノール,脂肪酸)依存的な成熟卵内への蓄積量(必要条件)+受精後に発現する胚性因子の役割(RAへの変換,ミトコンドリア機能の活性)(十分条件)の一連の制御が卵割を決定していると考えられた。 興味深いことに、脂肪酸添加よる受精卵のミトコンドリア機能と卵割の異常がRA添加で解除された。一方で、受精卵にRAを添加すると胚盤胞期胚が形成されず、RAレポーターマウスの胚盤胞期胚ではRAシグナルが内部細胞塊で高く、栄養膜細胞で低かったことから、RAの局在性が更なる発生ステージ誘導に重要と考えられた。今後、細胞/時期特異的なRA合成と生理的作用を詳細に研究することで、卵のRA作用力を最大限引き出す培養系開発に繋がると考えている。
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Research Products
(3 results)