2021 Fiscal Year Research-status Report
新しい変化センサー・卵巣間質組織に着眼した繁殖障害/機能疾患の早期治療法の構築
Project/Area Number |
21K14962
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梅原 崇 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (60826858)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生殖 / 卵巣 / 加齢 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,申請者がこれまで明らかとしてきた加齢や肥満に伴う雌の生殖器官である卵巣間質組織の変化が,環境変化に対するセンサーであり,その知見から雌畜の利用効率を高める非侵襲的な治療法開発を目指す.2021年度は,卵巣が変化する原因を探索したところ,脂質がたまった加齢マウスや肥満マウスでは,脂肪酸合成遺伝子の発現や脂質取り込み受容体の発現は変わらない一方で,卵巣間質組織の脂質酸化レベルが劇的に低下することを突き止めた.さらに,血中の中性脂肪濃度は肥満マウスでは高いが,加齢マウスでは変わらなかったことから,肥満マウスでは『取り込み過剰と代謝低下』によって,加齢マウスでは『代謝低下』によって,卵巣間質が脂肪化していたことが明らかとなった.次年度は,両者に共通して起こる代謝低下の原因について,遺伝子発現解析,免疫学的解析,代謝学的解析を用いて明らかにしていく.また,脂肪化と線維化の関係性を解明するために,脂肪組織化した卵巣組織を用いて解析すると,このような脂肪組織化した卵巣では,炎症レベルが極めて高くなっていた.近年,このような老化や肥満と炎症の間をつなぐキーファクターとして,老化細胞が知られている.老化細胞もまた脂肪滴を蓄え,炎症を誘発し,組織線維化を誘導する.そこで,新しいキーワードとして老化細胞に着眼したところ,卵巣間質に老化細胞様の細胞が蓄積していること,そしてその周囲に免疫細胞であるマクロファージが蓄積していることを突き止めつつある.したがって,脂肪組織化に伴う老化細胞の蓄積が周囲に炎症を引き起こし,免疫細胞を誘引することで組織線維化を誘導していると考えられた.次年度は,老化細胞がなぜできるのか,そしてどのように免疫細胞が誘引されるかを含め検討していく.そして,これら成果を統合して,その薬理学的処置法を探索するとともに,研究成果について,学会発表や論文発表を計画する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた卵巣脂肪化や線維化メカニズムについて,遺伝子発現解析や免疫学的解析,代謝学的解析を組み合わせることで,加齢と肥満の共通点(代謝障害)と相違点(血中脂肪酸濃度)が見えてきた.つまり,代謝障害が卵巣機能低下の根幹である可能性が示唆される.そこで予定通り,2022年はこの代謝障害を改善する薬剤を用いた機能改善法の構築に展開していく計画である.また,脂肪化と線維化の関係という点では,予定されていた結果・解析のみならず,新しいキーワード・老化細胞を見出し,その重要性が示唆されつつある.そこで2022年に実施する計画に加えて,老化細胞に関連した研究を加えることで,さらなる研究発展が期待できると考える.したがって,当初の計画以上に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り2021年度に明らかとなった代謝障害・炎症・老化細胞という基礎研究的な知見をもとに,薬理学的処置を行っていく.投与方法として卵巣が脂肪化・線維化する前から投与していく予防法と,脂肪化・線維化した後に投与を開始する治療法の2つのパターンで投与することを計画しているが,使用できるマウスには限りがある.そこで,効果が見られやすいと考えられる予防法から実施し,効果的濃度を限定した後,治療法へと進むことで円滑な研究の遂行を目指す.
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