2023 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による中性アミノ酸代謝動態の解析とこれを標的とした新規がん治療法の開発
Project/Area Number |
21K14971
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
房 知輝 山形大学, 医学部, 助教 (90878141)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | がん / 中性アミノ酸 / 放射線 / エネルギー代謝 / 分岐鎖アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では(1)中性アミノ酸のうち分岐鎖アミノ酸代謝過程を標的とした放射線増感を試み、(2)分岐鎖アミノ酸代謝阻害時の放射線照射時のエネルギー応答を評価し、(3)また、(1)で得られた放射線増感作用のメカニズムに関する証左を示した。これらの検討結果から、中世アミノ酸のうち分岐鎖アミノ酸代謝を標的としたより新規放射線療法の開発につながる実証を得た。 (1)では、分岐鎖アミノ酸代謝を担うBCAT1およびBCKDH阻害を通じた分岐鎖アミノ酸代謝の抑制が放射線感受性に及ぼす影響を調べた。その結果、いずれの機能抑制でもがん細胞の放射線感受性を増強できることが示された。 (2)では、放射線照射後のがん細胞中ATP量を比較したところ、分岐鎖アミノ酸代謝阻害により放射線照射により増加するATP量が減少する結果を得た。また、解糖系および酸化的リン酸化経路を中心とした代謝物をLC/MSを用いて測定を実施した。その結果、分岐鎖アミノ酸代謝阻害がこれらの代謝産物量を変化させることを明らかとした。 (3)では、得られた放射線増感のメカニズムとして細胞老化・アポトーシス・・オートファジー経路の評価を実施した。その結果、分岐鎖アミノ酸代謝阻害が放射線照射による細胞老化を顕著に低下さえることを明らかとした。また、分岐鎖アミノ酸代謝阻害は放射線照射後のアポトーシスを一部増加させることに加えて、オートファジー活性が低下する所見を得た。以上の結果から、分岐鎖アミノ酸代謝阻害が放射線による細胞死様式を大きく変化させており、アポトーシスなど増強させることで放射線感受性を増加させていることが明らかとなった。 以上の検討から、分岐鎖アミノ酸代謝を標的とした放射線増感を実現し、新規放射線療法の開発につながる基礎的データを得ることに成功した。
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