2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K14972
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶 健二朗 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (60884252)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | PAR-2 / 精子 / 精子運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はマウスの精子におけるPAR2活性化が精子の運動性および受精能に与える影響を解明し、精子の運動性低下に起因する男性不妊に対する新たな不妊治療法の構築を目的とする。 まず、マウスの精子におけるPAR-2発現をウェスタンブロットにより検討したところ、野生型マウス(WT)の精巣上体尾部より採取した精子にはPAR-2が発現していたが、PAR-2ノックアウトマウス(PAR-2KO)由来の精子ではPAR-2発現が認められなかった。次に、精子のPAR-2を活性化した際の細胞内カルシウム濃度の変化をカルシウムイメージングにより評価したところ、WTマウス由来の精子ではPAR-2アゴニストの添加により細胞内カルシウム濃度が増加することが明らかとなった。PAR-2活性化が精子の運動能に与える影響を検討するために、血球計算盤上で運動能を評価する光川法を用いた。その結果、WT由来の精子ではPAR-2の活性化により精子運動能が増強される傾向が認められた。また、PAR-2が受精段階以降におよぼす影響を評価するために、WTおよびPAR-2KOを交配した際の着床痕数の評価を行った。その結果、PAR-2KO雄とWT雌を掛け合わせた場合とPAR-2KO同士を掛け合わせた場合の着床痕が、WT同士およびWT雄とPAR-2KO雌を掛け合わせた場合の着床痕と比較して減少していることが分かった。以上のことから、精子のPAR-2の活性化が細胞内カルシウム濃度の変化を介して精子運動に関与しており、それが着床数の変化につながっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PAR-2が精子のカルシウム濃度の変化を介して精子運動を増強することが明らかになってきたが、実際にそれが受精に影響を与えているかはまだ検討できていない。それを検討するために体外受精実験を行う必要があるが、その手技の習熟に予定よりも時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はPAR-2が実際に受精に影響を与えているか検討するとともに、PAR-2リガンド産生細胞の同定を行う。具体的には、雄のWTマウスの精巣上体尾部より精子を採取し、精子前培養培地にて媒精を行った後にPAR2アゴニストを添加する。過剰排卵処置を行った雌のWTマウスより卵子を採取し、前述の媒性を行った精子と共培養する。第2極体を放出した卵子を受精卵としてその個数を計測することで、PAR2の活性化が体外受精におよぼす影響を検討する。また、雌のWTマウスより膣、子宮、卵管、卵巣を採材し、パラフィン包埋組織切片を作製した後に肥満細胞トリプターゼに対する抗体を用いた免疫染色を実施する。また、肥満細胞特異的トリプターゼ欠損マウス(MCtrypKO)を用いて、MCtrypKOマウスの雌とWTマウスの雄を掛け合わせた際の産子数の変化を評価する。MCtrypKOマウス は既に作製済みであり、実験に使用可能な状態である。また、トリプターゼ欠損が受精および胚発生におよぼす影響を検討するために、MCtrypKOマウスまたはWTマウスの雌とWTマウスの雄の交尾後7日目(受精後180時間)に雌マウスから子宮を採材し、パラフィン包埋組織連続切片を用いて着床卵子数および胚発生段階を比較検討する。
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