2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism of cancer progression induced by TGF-beta to develop novel therapies for canine malignant melanoma
Project/Area Number |
21K14973
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
酒居 幸生 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (90844192)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | TGF-β / 悪性黒色腫 / オートクリン / 機能解析 / イヌ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の初めに、3種類のイヌ悪性黒色腫細胞株(CMM-1、KMeC、LMeC)におけるTGF-βとTGF-β受容体の発現解析を行った。その結果、いずれの細胞株においてもこれらの発現が確認され、TGF-βオートクリン機構の存在が示唆された。
次に、TGF-β受容体欠損イヌ悪性黒色腫細胞株を作製し、これを用いて癌細胞におけるTGF-βオートクリンの機能解析を行う予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により継続的に実験を行うことができず、TGF-β受容体欠損イヌ悪性黒色腫細胞株の作製が難航した。そこで、このような事態に備えて当初から計画していた実験(野生株にTGF-β阻害剤を添加する実験)に切り替えて、研究を着実に進めることにした。その結果、イヌ悪性黒色腫細胞株の増殖能および血管新生能はTGF-βにより促進、TGF-β阻害剤により抑制された。一方、同細胞株の上皮間葉転換および転移能はTGF-βにより抑制、TGF-β阻害剤により促進された。以上のことから、TGF-βはイヌ悪性黒色腫に対する悪性化促進作用と抑制作用を併せ持つユニークな分子である可能性が示された。そのため、TGF-βを直接標的とする治療法は逆に癌を進行させる危険性があるため、TGF-βの細胞内シグナル分子を標的とする治療法が理想であると考えられた。
医学領域では癌とTGF-βとの関連が盛んに研究されており、その中でTGF-βは癌細胞の上皮間葉転換や転移能を促進することが知られている。しかし、本研究では逆にTGF-βがこれらの作用を抑制するという全く新しい知見を得た。この成果はこれまでの概念を覆す発見となる可能性があり、大変興味深いものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、イヌ悪性黒色腫細胞株におけるTGF-βとその受容体の発現解析を行い、TGF-βオートクリンの存在を示唆した。また、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの、予備の研究計画に切り替えることでTGF-βオートクリンの作用を解明することに成功した。そのため、次年度は当初の計画通りにTGF-βシグナル伝達経路を探索する予定である。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果により、TGF-βの細胞内シグナル分子を標的とする治療法が理想であると考えられたが、イヌ悪性黒色腫におけるTGF-βシグナルは解明されていない。そこで次年度は、イヌ悪性黒色腫細胞株を用いてTGF-βシグナル伝達経路を同定し、新規治療標的分子を見出す。当初の計画では野生株とTGF-β受容体欠損株を用いる予定であったが、こちらもTGF-β阻害剤を用いた実験系に切り替える。
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Causes of Carryover |
本研究成果を学術論文(英文)として投稿する予定であったが、本年度中に準備が完了しなかったため次年度使用額が生じた。当該研究費は次年度に英文校正費や論文投稿費として使用する計画である。
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