2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism of pathogenicity of Rhodococcus equi in ruminants and establishment of a diagnostic method
Project/Area Number |
21K14975
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
鈴木 康規 北里大学, 獣医学部, 講師 (60848026)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ロドコッカス・エクイ / 病原性プラスミド / ゲノム解析 / RNA-Seq / アンチセンスRNA / プロモーター活性 / モノクローナル抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
R. equiゲノムライブラリー構築に向け、これまでに当研究室保存11菌株の全ゲノム配列を決定しNCBIデータベースに登録した。またその中に、未報告の非伝達性病原性プラスミド保有株が存在することを明らかにした。 ゲノム配列を決定したVapN高産生株と非産生株についてRNA-Seq解析を実施した。両株ともほぼ同一の病原性プラスミドpVAPNを2から3コピー保有していた。これは、VapN発現変化がpVAPN上の変異やコピー数の違いが要因ではないことが示唆する。また、高産生株はVapN発現条件以外で培養するとVapNのORF内にアンチセンス鎖(AS鎖)RNAが増加することを明らかにした。非産生株ではいずれの培養条件においてもAS鎖を検出した。このことは、各鎖に対する特異的プライマーで合成したcDNAを用いたqRT-PCRでも同様であった。さらに、VapN遺伝子6bp下流にAS鎖の転写開始点を特定し、その周囲にはStreptomycesのコンセンサス配列が良く保存された-10、-35領域が存在したことから、VapN遺伝子下流領域にAS鎖発現調節プロモーターが存在すると予測された。本プロモーター活性を測定したところ、vapNアンチセンスプロモーター活性は非発現株の高pH培養条件下で顕著に高値を示すことが明らかとなった。以上よりVapN産生量にはAS鎖の発現が影響を与える事が示唆された。 抗VapNモノクローナル抗体作出に向け、まずVapNの合成ペプチド使用したELISAを実施したが、明確なエピトープ部位を決定することはできなかった。しかし、リコンビナントVapNの投与方法を腹腔内と皮下に変更した結果、抗VapN抗体価が上昇するまで持続的な抗原投与が可能となり、最終的に3系統のハイブリドーマを作出できた。そして、それらの培養上清から抗VapNモノクローナル抗体が精製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全ゲノムライブラリーの構築は計画通り進行し、その過程で明らかにした未報告の非伝達性病原性プラスミド保有株に関する論文を投稿し受理された。また、本年度予定していた網羅的遺伝子発現解析も予定通り実施し、VapN遺伝子発現にはアンチセンス鎖RNAの発現制御が関与していることを明らかにした。さらに、VapNタンパク質の直鎖状アミノ酸配列で構成されるエピトープ部位の決定には至らなかったが、計画に先んじて抗VapNモノクローナル抗体を作出することに成功した。このため、研究はおおむね順調に進展していると考えている。来年度は、(1)保存菌株の全ゲノム配列決定の継続、(2)アンチセンス鎖RNA発現制御因子の特定、(3)作出したモノクローナル抗体の特異性の確認と診断法への検討を実施していく。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)全ゲノムライブラリーの構築:引き続きロングリード及びショートリードの2種類の次世代シークエンサー解析に供し、ハイブリッドアセンブリすることで精度の高い全ゲノム配列データを得る。決定した保存菌株の全ゲノム配列は、データベースに登録し比較ゲノム解析のツールとする。 (2)VapN発現制御機構の解明:本年度の網羅的遺伝子発現解析により、VapN遺伝子発現にはアンチセンス鎖RNAの発現制御が関与していることを明らかにした。今後は、VapN下流領域(アンチセンスプロモーター領域)配列を用いたDNAプルダウンにより、本領域に特異的に結合するタンパク質を検出し、アンチセンス鎖発現に影響を与える制御因子を同定する。また、同定した遺伝子の欠損株・補完株を作製し、VapN発現における影響を検討する。 (3)In vitro、In vivoにおける病原性評価法の改良:当研究室ではこれまで、EGFP発現を利用した本菌の細胞内増殖の評価法(病原性試験法)を報告したが、励起光の照射領域しかシグナルを検出できず、サンプル全体における菌の増殖の定量性評価には適していない。そこで、高感度かつ定量性に優れ、基質の添加不要なルシフェラーゼ(Lux)による自家生物発光システムを利用して、自家発光R. equi株を作出し、In vitro、In vivoにおける細胞内増殖の定量的評価法の開発を進める。そして、(2)で作出した遺伝子変異株のIn vitro、In vivoにおける増殖性評価を定量的に検討する。 (4)抗VapNモノクローナル抗体を用いた診断法の開発:作出した抗VapNモノクローナル抗体の特異性をウェスタンブロット及びマウス感染後の臓器切片を用いた免疫染色によって証明する。さらに、実際の発症したウシ・ヤギの病変部の免疫染色を実施し、本疾患の確定診断法への応用を検討する。
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Causes of Carryover |
学会発表のため旅費を計上していたが、今年度は参加学会のWeb開催及び参加予定学会の延期により、旅費が0円となった。また、実験で使用する試薬について、一括購入した結果、当初計画より物品費を節約することができたため、未使用額が発生した。 次年度は、当初予定していた学会に加え、延期となった学会への旅費・参加費に支出予定である。また、ゲノム解析が順調に進行しているため、次世代シークエンサー用試薬での支出を予定している。
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Research Products
(5 results)