2021 Fiscal Year Research-status Report
ウイルスに付加する糖鎖の異種宿主間病原体伝播における新規生物学的機能の解明
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21K14982
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日尾野 隆大 北海道大学, 獣医学研究院, 講師 (00775819)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ウイルス糖タンパク質 / インフルエンサウイルス / グライコフォーム / 糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物組織で増殖したウイルスを培養細胞等で再増殖することなく、粒子上の糖鎖を解析する技術を開発中である。A型インフルエンサウイルス、A/Puerto Rico/8/1934 (H1N1)株を接種したマウスから肺を採材し、10%臓器乳剤を調製した。この臓器乳剤から、認識エピトープの異なる2種類の抗体を用いて、2段階の免疫沈降を実施することによって、ヘマグルチニンタンパク質を選択的かつ高精度に抽出することに成功した。一方で、抽出したヘマグルチニンタンパク質上の糖鎖に関する情報の取得を試みたものの、まだ成功していない。糖鎖検出とタンパク質検出の感度の差に起因するものと考えている。今後は、マウスでより増殖する別のウイルス株を利用するか、または糖鎖検出のプロトコルを改善し、本技術の確立を継続する。 ウイルス糖タンパク質に付加する糖鎖の制御機構を調べるために、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン遺伝子をクローニングして、組換えタンパク質発現系を構築した。さらに組換えヘマグルチニンと蛍光タンパク質のフュージョンタンパク質を作出し、各々のタンパク質に付加する糖鎖を解析したところ、フュージョンタンパク質では元のタンパク質と比較してマンノース型糖鎖の含有量が顕著に増加していることが分かった。現在、2つのタンパク質におけるグライコフォームが変化した要因について探索している。今後はグライコフォームが変化した要因とウイルス感染の関係に着目して解析をすすめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は「動物組織で増殖したウイルスを培養細胞等で再増殖することなく、粒子上の糖鎖を解析する技術を開発すること」であった。本項目については、ヘマグルチニンタンパク質の高度精製法が確立されたことからある程度目処が立っているものと考えているが、当初目標の達成には至っていない。一方で、ウイルス糖タンパク質に付加する糖鎖の制御機構探索の過程で、ウイルス糖タンパク質上の糖鎖構造を制御する技術確立につながる現象が認められた。これは当初計画では予想していなかったことであり、上記の目標と合わせて両方向からの解析を進めることによって、ウイルス粒子に付加する糖鎖の生物学的意義についてより包括的に理解が進むと考えている。そのため、おおむね順調に進展している、を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルス粒子上の糖鎖解析技術の開発を急ぐ。これに加えて、本年度から組換えヘマグルチニンとフュージョンタンパク質で認められたグライコフォームの差を作り出している要因の探索を研究計画に加える。本項目についてはウイルス糖タンパク質上の糖鎖構造を制御する技術の確立を目指して研究開発を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定よりも少ない試行回数でヘマグルチニン糖タンパク質の高度精製系を確立できたため、若干の次年度使用額が生じた。本経費は2022年度請求額と合わせて、本年度から新たに実験計画に盛り込んだ「ウイルス糖タンパク質の糖鎖制御技術確立」に用いる。
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