2022 Fiscal Year Research-status Report
ハムスターを用いたSARS-CoV-2感染肺の2光子生体イメージング解析
Project/Area Number |
21K14984
|
Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
植木 紘史 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 研究所・国際ウイルス感染症研究センター, 上級研究員 (70794907)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | COVID-19 / SARS-CoV-2 / 免疫系 / 生体イメージング / 血小板 / 好中球 / 血流 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)は致死性の肺組織障害を引き起こす急性呼吸器感染症である。COVID-19重症例の肺では大量の免疫細胞の浸潤が認められ、病態の増悪に寄与することが示唆されているが詳細については不明である。SARS-CoV-2の感染部位における炎症進展ならびに組織障害のメカニズムを解明するためには、感染から重症化に至るまでの感染個体の体内で起きている様々な生理学的事象を可視化して解析する必要がある。植木らはこれまでに2光子励起顕微鏡を用いた生体イメージングシステムを開発したことで感染動物の肺を高解像度で観察し定量化解析が可能な実験系を確立してきた。本研究では、SARS-CoV-2感染肺における免疫細胞の役割について、生体肺イメージングシステムを用いて解析し、COVID-19肺炎の病態を解明することを目指している。2022年度の検討において、以下の結果を得ている。 生体イメージング解析を行うことで、感染動物(ヒトアンジオテンシン変換酵素2発現トランスジェニックマウス)の肺では、肺毛細血管中の好中球の数が感染経過に従って増加することが示された。さらに、感染肺においては血小板の凝集塊や、好中球と血小板の複合体が肺血流を障害することで病態の増悪に寄与している可能性が明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光レポーターSARS-CoV-2に感染したhACE2 Tgマウスの肺を観察すると、Venus陽性のI型肺胞上皮細胞とII型肺胞上皮細胞が観察され、これらの肺胞上皮細胞種がSARS-CoV-2に感染することが示された。蛍光標識DextranをhACE2 Tgマウスの血管内に投与すると血流が可視化され、SARS-CoV-2に感染したhACE2 Tgマウスの肺ではDextranの肺胞腔への漏出が認められた。一方、非感染マウスでは肺毛細血管からの蛍光標識Dextranの漏出は認められなかった。また、SARS-CoV-2に感染したhACE2 Tgマウスの肺では、肺毛細血管中の好中球の数が感染経過に従って増加し、その移動速度が低下することが示された。さらに、SARS-CoV-2感染マウスの肺血管内には血小板の凝集塊や、好中球と血小板の複合体が形成されることが明らかとなった。さらに、蛍光標識した赤血球をSARS-CoV-2感染マウスに移入し、その挙動を観察したところ移入赤血球が通過しない肺血管の存在が認められた。本研究により、SARS-CoV-2感染肺では好中球や血小板の凝集塊が肺血管内に形成されることで血流が障害され、ガス交換における機能性血管が減少していることが示唆された。このように、SARS-CoV-2感染動物の生体イメージングに成功し、SARS-CoV-2肺炎の病態の一因を明らかにしたことから、本研究課題は順調に遂行してきているものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、研究実施計画に従って検討を行う。特に、好中球の移動速度などの細胞動態の変化が顕著に現れる感染後のタイミングに着目し、解析を進める。FACS法を用いて好中球をエンリッチメントし、RNA-seq等で遺伝子発現解析を行う。得られた遺伝子発現プロファイルの中から、非感染と感染肺の間で大きく変動し、接着因子やサイトカインなどの免疫系の細胞応答に関与する遺伝子に着目する。さらに、これらの分子を標的とした中和抗体や阻害剤を用い上述の解析で得られた免疫動態に与える影響についても検討を進める。
|
Causes of Carryover |
研究試薬の消費を予定よりも抑えることができたため本年度の助成金に未使用分が生じた。 来年度に研究計画の進展に沿った研究試薬の購入を予定している。
|
Research Products
(12 results)