2021 Fiscal Year Research-status Report
MDSCの免疫抑制機構に着目した犬の胎子免疫寛容誘導メカニズムの解明
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21K14989
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
小林 正人 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (60898063)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 免疫寛容 / MDSC / 犬 / PDL1 / 胎子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、犬の胎児免疫寛容におけるMDSCの役割を解明するため、妊娠犬の末梢血中MDSCとT細胞の発現量を解析するとともに、MDSCの免疫抑制能についても検討した。本研究では大学附属動物医療センターに来院した妊娠犬および当該研究室で飼育している妊娠犬の合計5頭から妊娠初期、中期、後期でそれぞれ採血を実施し、採取された血液中のMO-MDSC、PMN-MDS、CD4T細胞およびCD8T細胞の割合を解析した。その結果、妊娠期間に関連してMO-MDSCおよびPMN-MDSの割合が増加し、逆にCD4T細胞およびCD8T細胞の割合は減少した。さらに、MDSCとT細胞の関連性を解析すると、MO-MDSCとPMN-MDSCはCD4T細胞と負の相関を示した。PDL1分子の発現解析では、妊娠犬で増加が認められたPMN-MDSCおよびMO-MDSCはPDL1分子を発現していなかった。妊娠で認められたMO-MDSCとPMN-MDSCのT細胞抑制能を解析するために、Con-Aにより活性化したT細胞とMO-MDSCあるいはPMN-MDSCの共培養を行なった。その結果、T細胞増殖の抑制とともに、T細胞活性に伴い分泌されるIFNγの量が減少した。従って、妊娠犬で増加したMO-MDSCとPMN-MDSCは免疫抑制能を有していることが明らかとなり、これはMDSCが犬の胎子免疫寛容に貢献していることを示唆していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多くの妊娠犬から採血を実施する必要があったが、大学付属動物医療センターに来院した患者や研究室で飼育している妊娠犬から、継続的に血液サンプルを採取することができた。そのため、計画通りに研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、妊娠犬のMDSCの免疫抑制作用の制御機構を明らかにする予定である。すでにPDL1/PD1経路は2021年度の解析でMDSCの免疫抑制作用に関与していないことがわかっているため、他の分子について解析する予定である。また、2022年度は、胎盤のMDSCについても末梢血と同様の解析を行う予定であるが、この実験系はほぼ2021年度の研究で確立しているため、胎盤の解析も順調に進展するものと予想している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で行えなかった学会発表の旅費と、論文作成が遅れていることによる論文投稿費用だと考えられる。すでに、投稿用の論文作成は完遂しておりこの投稿費用、さらにオンラインでの国際学会や国内学会での研究発表を予定しており、これらの旅費や学会参加費に使用する計画である。
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Research Products
(1 results)