2022 Fiscal Year Research-status Report
MDSCの免疫抑制機構に着目した犬の胎子免疫寛容誘導メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K14989
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
小林 正人 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (60898063)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | MDSC / 犬 / 妊娠 / 免疫寛容 / リラキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
母体にとって半異物である胎子が正常に発育できるのは、胎子に対する母体免疫反応が抑制 (胎子免疫寛容) されているためであり、この胎子免疫寛容が正常に誘導されないと流産が引き起こる。これは犬の繁殖において問題となるため、胎子免疫寛容誘導機構の解明は重要な研究課題の一つである。2021年度の研究により、骨髄由来免疫抑制細胞 (MDSC) が妊娠犬の血液中で増加し、さらにこのMDSCは免疫抑制作用を有していることから、増加したMDSCは母体免疫の抑制に関与することを発見した。2022年度はこのMDSCの誘導機構を解析することを目的に研究をおこなった。妊娠関連ホルモン(エストロジェン、プロジェステロン、リラキシン)の血中濃度を妊娠初期、中期、後期で解析を行い、血中MDSCとの関連性を解析すると、血中リラキシン濃度とMO-MDSCとの相関性が認められた(R=66)。次に、相関性が認められたリラキシンがMDSCの誘導能を有しているかin vitroで解析を行なった。非妊娠犬から末梢血単核細胞を抽出し、リラキシンを様々な濃度で添加して培養を行うと、リラキシン濃度依存性にMO-MDSCが誘導された。また、Con-Aにより活性化されたT細胞はリラキシン添加によりIFNγの分泌低下とT細胞の増殖抑制が認められた。以上から、リラキシンはMO-MDSCを誘導して、T細胞活性を抑制していることを明らかにした。リラキシンは妊娠中に分泌されることから、本研究結果はリラキシンが胎子免疫寛容に関与している可能性を示唆していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リラキシンを用いた実験が想定より遅れてしまった。犬リラキシンのリコンビナントタンパクは国内での販売はなく、海外からの発注になった。また、新型コロナウイルス感染症による輸送状況の変化も重なり試薬の入手に時間を要し、その結果実験開始時期が遅れてしまった。今後は、犬リラキシンタンパクを使用した実験を数多く行うことが想定されるため、現在は独自に犬リラキシンのリコンビナントタンパク作成を行えるように、環境を整えているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、リラキシンの胎子免疫寛容効果を明らかにする計画である。すでにリラキシンはMDSCを誘導して免疫抑制作用を有していることは明らかとなったが、リラキシンが胎子に対する母体免疫反応を抑制するのか明らかにされていない。そこで2023年度は流産モデルマウスを用いてリラキシンの効果を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画の遅れにより生じたと考えられる。次年度は主にマウスを用いてリラキシンの効果を検討する実験を行う計画であり、また使用するリラキシンタンパクにおいては独自に精製できるように現在準備を進めている。この準備が整い次第速やかにマウスを用いた実験を遂行する計画である。持ち越した助成金については主にマウスを購入とリコンビナントタンパク精製に必要な試薬に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)