2021 Fiscal Year Research-status Report
イヌ悪性腫瘍に起因するDICの新規治療法の確立を目指した基盤研究
Project/Area Number |
21K14992
|
Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
小林 宏祐 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (40876893)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | イヌ悪性腫瘍 / スタチン / 抗腫瘍効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
イヌ悪性腫瘍に起因する播種性血管内凝固 (DIC) は,その病態に不明な点が多く有効な治療法も確立されていない。そこで本研究課題では,腫瘍細胞/組織における凝固活性因子である組織因子 (TF) と抑制因子であるトロンボモジュリン (TM) の発現バランスの変化がその病態において重要であると仮説を立てた。また高脂血症治療薬であるスタチンは,過去の報告よりTFやTMの発現を調節する作用が知られていることから、その治療薬として応用できる可能性を考えた。 当該年度ではイヌ乳腺腫瘍細胞に対するスタチンのin vitroにおける抗腫瘍効果を検討した。スタチンはAtrovastatin (Atr),Fluvastatin (Flu),Simvastatin (Sim) の3種を用いた。イヌ乳腺腫瘍細胞株4種のうち3種ではFluおよびSimによる強い細胞傷害性が認められ,その作用は用量依存的であった。一方でAtrは他の2薬と比較して弱い細胞傷害性しか認められなかった。その細胞傷害性の機序としては,Caspase-3の活性化を伴うアポトーシスの誘導とG0/G1期における細胞周期停止であることが明らかとなった。さらなる分子生物学的な機序の解明のためにAkt,Erk1/2およびJNKのリン酸化状態への影響を解析した。いずれの細胞株においてもAktのリン酸化タンパクの減少は認められなかった。一方で感受性のある細胞株のうち1種ではFluとSimによるErk1/2のリン酸化タンパクの減少が認められた。JNKのリン酸化に関しては,感受性のある細胞株すべてにおいてFluvastatinとSimvastatinによる上昇が認められた。そのためスタチンのイヌ乳腺腫瘍に対する細胞傷害性の共通する機序としてJNKのリン酸化レベルの上昇が重要であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スタチンの抗腫瘍効果の解析は順調に進んでいるが,抗凝固作用の解析に遅れが生じている。ただし,イヌ腫瘍組織や末梢血における組織因子やトロンボモジュリンの発現,活性化に関する解析を予定しているが,臨床検体の確保は順調に行えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
イヌ腫瘍症例より採材した腫瘍組織および末梢血における組織因子およびトロンボモジュリンの発現あるいは活性化を解析し,凝固パラメータとの相関性を解析することで,それらの因子のイヌ悪性腫瘍に随伴した血液凝固障害の病態における重要性を検討する。 また腫瘍細胞株を用いてスタチンがそれらの因子の発現や活性化に与える影響および分子生物学的機序を解析することで,スタチンの抗凝固作用に関する検証を行う。
|
Causes of Carryover |
一部の試薬をキャンペーン等で予算より安価に購入できたため,余りが生じた。次年度文と合わせて本研究課題の遂行に必要な物品費として使用する。
|