2023 Fiscal Year Annual Research Report
イヌ悪性腫瘍に起因するDICの新規治療法の確立を目指した基盤研究
Project/Area Number |
21K14992
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
小林 宏祐 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (40876893)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イヌ血管肉腫 / 組織因子 / トロンボモジュリン / スタチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,凝固促進因子である組織因子 (TF) と凝固抑制因子であるトロンボモジュリン (TM) の発現バランスの不均衡がイヌ悪性腫瘍に随伴する血液凝固障害の原因となっていると仮説を立てた。上皮性悪性腫瘍 (40症例,45組織),間葉系悪性腫瘍 (24症例,32組織),良性病変 (12症例,15組織),正常組織 (末梢血,頭側皮静脈,皮膚,肝臓,脾臓,腎臓,膀胱; 各3症例) における各因子のmRNA発現量を解析したところ,一部の症例では顕著に高いTF発現を認めたが,腫瘍組織における有意な発現上昇は示されなかった。一方で,TMの発現に関しては上皮系,間葉系悪性腫瘍ともに正常組織より発現が有意に低い結果が得られた。この結果よりイヌ腫瘍組織におけるTFおよびTMの発現バランスの不均衡の存在が示唆されたが,全身的な凝固障害への関与を示すためにはさらなる研究が必要と考えられた。 加えて,ヒトの高脂血症治療薬として用いられるスタチン系薬剤のTFおよびTMに対する発現調節作用を検討した。3種のスタチン系薬剤 (アトルバスタチン,フルバスタチン,シンバスタチン) はイヌ血管肉腫細胞株に対して細胞増殖抑制効果を示すとともに,mRNAおよびタンパクレベルでTFの発現を低下,TMの発現を上昇させた。その機序を解明するためにAktに着目した。スタチンはAKtのリン酸化を抑制した。しかしながら,Akt阻害薬 (MK-2206) は一部の細胞株ではスタチンと同様にTFやTMの発現を変化させるものの,細胞株間で作用が異なっていた。そのため,Aktのリン酸化の抑制はスタチンの作用における共通した機序ではないと考えられた。
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