2021 Fiscal Year Research-status Report
Class A CpGオリゴDNAナノカプセルを用いた経口粘膜アジュバントの開発
Project/Area Number |
21K14997
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山本 祥也 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (90825845)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | Class A CpGオリゴDNA / DNanocap / 経口粘膜アジュバント / 免疫グロブリンA / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
CpGオリゴDNA(CpG ODN)は、感染症やがんの予防・治療におけるアジュバント(免疫増強因子)としての利用が期待される核酸素材である。本研究の目的は、申請者がこれまでに開発した安定かつ効率的にCpG ODNを腸管に送達するDNAナノカプセル(DNanocap)と腸管粘膜免疫応答を増強するClass A CpG ODNを組み合わせ、感染症に対する経口粘膜アジュバントを創製することである。 初年度は、卵白アルブミン(OVA)経口感作モデルを用いて、Class A CpG ODNを包摂したDNanocap(CpG-Acap)のアジュバント活性とその機構の解析を実施した。マウスに1mg OVAと5mgのCpG-Acapを週1回、計3回経口投与し、経口投与の0, 7, 14, 21, 28および35日目に回収した糞便中のOVA特異的IgAおよび分泌型IgA量をELISA法を用いて解析した。また、経口投与の35日目にマウスを解剖し、血清中のOVA特異的IgG量をELISA法で測定した。陰性対照として生理食塩水(PBS)あるいは同量のカプセル単独(cap)を与えたマウスと比較して、CpG-Acapを与えたマウスにおける糞便OVA特異的IgA量および血清中のOVA特異的IgG量の増加は認められず、抗原特異的免疫応答に対するアジュバント活性はなかった。一方で、CpG-Acapを与えたマウスにおける糞便中の分泌型IgA量は、PBSおよびcapを与えたマウスと比較して経口投与の14日目に有意に増加し、解剖日(投与35日目)まで効果が持続するという想定外の結果を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、①破傷風毒素致死モデルを用いたCpG-Acapの予防効果の検証と②OVA経口感作モデルを用いたCpG-Acapのアジュバント活性機構の解析を当初の計画としていたが、試験①は破傷風毒素を用いるハードルの高い研究であることと、CpG-Acapの至適投与量が不明であったことから、より簡易的に実施できる試験②を先行して実施した。その結果、期待していたOVA抗原特異的な免疫応答に対するアジュバント活性は、5mgのCpG-Acapの経口投与では認められなかったため、試験①の実施も見送った。 一方で、当初の予定にはなかった糞便中の分泌型IgA量を測定したところ、陰性対照であるPBSおよびcapの経口投与群と比較して、CpG-Acapの経口投与群で有意に増加し、かつ誘導効果が長期間持続するという興味深い知見を得た。また、この分泌型IgAの増強作用がCpG-Acap単独の経口投与でも同様に惹起されるかどうかを追試したところ、CpG-Acap単独の経口投与では誘導されず、少なくともOVA抗原の同時投与が必要であることを明らかにした。 以上より、経口粘膜アジュバントとしての有効性は認められていないが、粘膜において感染防御に寄与する分泌型IgAを強力に誘導することを明らかにしたため、概ね順調に研究が進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は引き続き、OVA経口感作モデルを用いてCpG-Acapのアジュバント活性を検証する。その際には、CpG-Acapの投与量を10mg、20mgに増やしたパターンの検証を試みる。また、アジュバント活性が認められた場合は、保留していた破傷風毒素致死モデルでの予防効果についても検証する。 また、分泌型IgAの誘導に関わる機構を解析する。具体的には、OVAとCpG-Acapの同時投与の0、1、7、14および21日目にマウスを解剖し、パイエル板、小腸、盲腸および大腸組織における分泌型IgA量をELISA法を用いて測定する。陰性対照としてcapを用いる。加えて、回収した各組織における分泌型IgA関連因子の遺伝子発現パターン変動をリアルタイム定量PCR法で解析する。 さらに、当初より令和4年度に計画していた③CpG-Acapの体内動態と分布解析および④CpG-Acapの経口投与に伴う急性毒性の検証を実施する。
|