2021 Fiscal Year Research-status Report
Role of extracellular vesicles in the progression of macular degeneration
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21K14999
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
大津 航 岐阜薬科大学, 薬学部, 特任講師 (50843091)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 分泌小胞 / 視細胞 / 網膜変性疾患 / ライソゾーム / 光障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢黄斑変性は、加齢とともに黄斑の障害が不可逆的に進行し、場合によっては失明に至る網膜変性疾患である。高齢化に伴い世界的に増加傾向にあり、欧米において中途失明原因の第一位(本邦では第四位)となっており、高齢者のQOL維持の大きな課題となっている。加齢黄斑変性は血管新生を伴う滲出型とドライタイプとも呼ばれる萎縮型に分類されるが、特に萎縮型加齢性黄斑変性では、早期診断や治療の効果を評価するためのバイオマーカーの不足や、黄斑変性の詳細な分子メカニズムが未解明であることが創薬の妨げになっている。申請者はこれまでに、視細胞における後期エンドソームの役割に着目し、網膜恒常性における役割を明らかにしてきた。後期エンドソームは多胞体とも呼ばれ、細胞外小胞形成の場としても重要である。細胞外小胞は特異的なタンパク質や脂質、核酸を含み、他の細胞・組織への情報伝達を担っている。近年、細胞外小胞が、悪性腫瘍の転移や筋萎縮性側索硬化症をはじめとする神経変性疾患の病態進行において、非細胞自律性の情報伝達に関与していることが報告されている。一方で、網膜におけるそれらの役割については多くは明らかになっていない。本研究では新規遺伝子導入技術を用い、マウス網膜において視細胞由来細胞外小胞を単離・解析し、網膜恒常性における細胞外小胞の役割とそれらの分子基盤の解明を目標とする。また、細胞外小胞由来の成分と病態進行との関係を明らかにし、臨床応用可能なバイオマーカーの探索を試みる。本研究において得られた知見は、他の疾患の病態解明にも有用であると考えられ、特に神経変性疾患の分野への波及効果が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究を実施する上で必要なプラスミドベクターの開発と、細胞培養系におけるそれらの機能試験、そして、マウス網膜におけるin vivo遺伝子導入系の最適化を実施した。作製したプラスミドベクターにより発現するタグ付加レポーターは、培養細胞における一過性導入により、後期エンドソームへの局在と細胞外小胞への分布が確認された。マウス網膜への遺伝子導入試験においても、視細胞の特に錐体細胞における十分な発現が認められた。その他にも、培養細胞を用いた青色LED光障害系やタバコ煙障害系について、環境因子が誘導する細胞内ストレス応答経路についての解析も行い、それらとエンドソーム・ライソゾーム系との関連性を示唆する結果を得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したプラスミドベクターを用いマウスに遺伝子導入し、網膜におけるレポーターの発現について免疫組織染色で確認する。その後、血漿から細胞外小胞を分離し、付加したタグを用いたレポーターの検出を試みる。最終的に、レポーターの細胞外領域に付加したタグによる分離・精製により血漿から直接、錐体細胞由来の細胞外小胞が検出可能かについて検証する。これらの方法で得られた画分について、タンパク質の発現解析を行ない、視細胞特異的な内因性マーカータンパク質を同定する。並行して、遺伝子導入したマウスに対し、光や薬剤による障害、もしくはプラスミド共発現による遺伝子発現抑制や変異体発現などの処置を加え、網膜の形態異常、特にRPEへの障害やリポフスチンの蓄積、免疫応答としてミクログリアの遊走などについて解析を行い、黄斑変性疾患の分子メカニズムについて明らかにしていく。
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