2021 Fiscal Year Research-status Report
子宮内胎仔への造血幹細胞移植による新規異種間血液キメラマウスの作製
Project/Area Number |
21K15003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
全 孝静 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20837091)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / 経胎盤移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の造血幹細胞移植研究は、ドナー細胞の生着率を高めるため、骨髄破壊的前処置(放射線線照射、化学療法等)や免疫不全マウスに依存する場合が多い。しかし、前処置に伴うドナー細胞の生着不全やレシピエント寿命の短縮などの問題が懸念されていた。 本研究では、(1) マウス胎仔への経胎盤造血幹細胞移植法の開発、(2) 高いキメリズムを実現するため造血幹細胞欠損遺伝子改変マウスを利用、(3) 異種由来造血幹細胞を用いた異種間造血幹細胞キメラマウスの作製、の3項目を目的とし、研究を行った。 経胎盤造血幹細胞移植(胎盤を経由して胎仔に造血幹細胞を移植する方法)については、移植するためのガラス針や移植時期を検討することによって、高キメリズムの実現および移植後の胎仔生存率に影響が少ない方法を確立することができた。経胎盤移植の時期については胎生(Embryonic day; 以下、E)9.5からE11.5までの移植が可能であることがわかった。造血幹細胞を欠損する遺伝子改変マウスは、発生過程においてGATA-1を発現する細胞でのみRunx1の発現をレスキューするRunx1欠損GATA-1トランスジーンマウスを用いた。このマウス胎仔をレシピエントとし、同種および異種造血幹細胞を経胎盤移植を行った。その結果、移植前処置を行うことなく、ドナー由来の造血幹細胞が高い割合で生着することが可能であり、本研究課題で提案する「経胎盤移植」は、有効な造血幹細胞移植法になり得ることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、(1) マウス胎仔への経胎盤造血幹細胞移植法の開発、(2) 高いキメリズムを実現するため造血幹細胞欠損遺伝子改変マウスを利用、(3) 異種由来造血幹細胞を用いた異種間造血幹細胞キメラマウスの作製、の3つの研究を予定としていた。 現在までは経胎盤移植法を確立し、造血幹細胞を欠損する遺伝子改変マウスをレシピエントにすることで、同種・異種由来の造血系が再構築されたマウスを作製することができた。また、Runx1を造血系でのみ欠損するRunx1 cKOマウスを用いることで、長期生存するマウスを作製することに成功した。また、本研究課題の一部結果は論文として報告し、研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Runx1は造血系以外の発生にも関与しているため、造血幹細胞移植に成功してもRunx1欠損マウスの長期生存が困難とされていた。今回レシピエントとしてRunx1 cKOを用いてドナー由来の造血系を再構築することで、Runx1 cKOマウスの長期生存に成功した。また、経胎盤移植の時期をE11.5からE9.5日に早めることによって移植の効率を上げることができた。このことは、造血幹細胞が胎仔内に出現する前に造血幹細胞を移植することが可能であることを示唆し、さらなる応用が期待される。 今後は、異種(ラットやヒトなど)由来の造血幹細胞で置換した造血系キメラマウスの作製を試みる。
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Research Products
(3 results)