2022 Fiscal Year Research-status Report
神経前駆細胞の異常による水頭症モデルマウスを用いた病態解明
Project/Area Number |
21K15007
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
黒田 杏理 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (80897918)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水頭症 / 神経幹細胞 / Intermediate progenitor / Notchシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
水頭症は脳室に髄液が貯留して脳を圧排する病態である。胎児から小児期に生じれば脳の発達・発育が阻害され、精神・運動発達遅滞などの脳機能障害を来す。研究代表者は胎仔期の神経幹/前駆細胞で発現する遺伝子の中から、未分化性維持や増殖の制御に関わることが知られている因子であるKlf5に注目した。神経前駆細胞特異的にKlf5を過剰発現するNestinCre-Klf5マウスにおいて、胎生後期から水頭症を必発することを見出したことから、本研究を提案した。
令和4年度は、神経前駆細胞特異的にKlf5を過剰発現するマウスから採取・培養した神経幹細胞のトランスクリプトーム解析を行ったところ、Notchシグナルに関連する遺伝子群に有意な発現変化が認められ、全体的なNotchシグナルの不活性化と、それに不釣り合いなHes1発現亢進が観察された。その効果により、幹細胞性は失うもののある程度の未分化性を維持するintermediate progenitorの形成・維持に寄与することが示唆された。Klf5が幹細胞の未分化性を亢進させるという、これまで考えられてきたモデルに修正を迫る新たな発見であり、現在マウス脳を用いて確認を進めている。一方、タモキシフェン投与によって神経前駆細胞特異的にCreを発現させられるNestin-CreERマウスを用い、成体脳の神経前駆細胞でKlf5を過剰発現するマウスを作製した。本モデルを用いて、空間記憶や恐怖条件付け記憶などの網羅的な行動解析を行ったところ、不安に関連する行動の異常が認められた。現在、そのメカニズムを解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Klf5の新たな機能を示唆する研究結果を得たことから、実験計画を修正する必要があったため。また、出産・育児に伴う生活の変化もあり、実験の進行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
神経前駆細胞特異的Klf5過剰発現マウスの胎仔脳を用いて、intermediate progenitorが増加することによる大脳皮質の構築の変化を詳細に解析する。そのことによって、Klf5過剰発現マウスが水頭症を発症するメカニズムを明らかにしたいと考えている。
また、成体脳で神経前駆細胞特異的にKlf5を過剰発現するマウスを用いて、神経幹細胞の減少と行動変化との関係を明らかにした上で、神経幹細胞に直接作用して自己複製能を高める効果をもつことを研究代表者が報告したミノサイクリンを投与し、治療効果の有無を検証する。
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Causes of Carryover |
旅費を申請していたが、新型コロナ禍によって令和4年度も学会への現地参加が制限されたため、ウェブ参加のみであった。令和5年度は、学会に現地参加して研究成果を発表したいと考えている。
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Research Products
(1 results)