2023 Fiscal Year Research-status Report
順遺伝学で同定した新規遺伝子によるマウス・ヒトにおける神経分化制御機構の解明
Project/Area Number |
21K15011
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
吉田 純子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30769196)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 神経分化異常 / zinc finger protein / 1細胞解析 / 神経デフォルトモデル / 分化抵抗性 / ES細胞 / adult neurogenesis / 順遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、変異に伴いマウスES細胞の分化に異常をきたす機能未知のzinc finger protein(Zfp)遺伝子を同定し、その機能解析を進めてきた。その過程で、本Zfp遺伝子は特に神経分化に重要な機能を果たしていることがわかった。また、1細胞RNA-seq解析の結果、本Zfp遺伝子の破壊ES細胞では胎盤方向へ分化する細胞集団が存在することを突き止めた。哺乳類の初期発生における最初の細胞系譜分岐は、やがて胎児となる胚方向または胎盤方向への分化であるが、本Zfp遺伝子がその系譜決定時に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 そこで、本Zfp遺伝子による神経分化制御の分子メカニズムを詳細に調べるために、本Zfp遺伝子と相互作用する分子を質量分析で調べたところ、別のZfp遺伝子が、鍵となる遺伝子の候補として同定された。さらにこの別のZfp遺伝子が、ES細胞の多能性制御において重要な役割を果たしているOct4と三次元的に共局在していることが免疫染色の結果から判明した。1細胞RNA-seq解析の結果からも、本Zfp遺伝子の破壊ES細胞でOct4の発現上昇を認めている。 Oct4、本Zfp遺伝子、本Zfp遺伝子と相互作用している別のZfp遺伝子の3者による多能性維持や分化における遺伝子発現制御機構について、現在ChIP-seqとHiChIPによって解析することを試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた、マウス個体における本Zfp遺伝子の機能解析、およびヒトiPS細胞における本Zfp遺伝子のホモログ(ZNF遺伝子)の破壊株の作製において遅れが生じている。理由は、マウスES細胞を用いた本Zfp遺伝子の分子メカニズムの解明の方に、当初予定していたよりも多くの労力とコストがかかっているためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
本Zfp遺伝子とOct4という多能性制御に重要な分子との関連性を発見しているので、引き続き、本Zfp遺伝子産物とOct4との物理的または機能的な相互作用を中心に解析を進める予定である。方法としては、(1) Oct4、本Zfp遺伝子、本Zfp遺伝子と相互作用している別のZfp遺伝子の3者のChIP-seqを行い、3者による遺伝子発現制御機構を同定する。(2)ライブセルイメージングによって上述の3者の挙動を解析する。(3) 野生型ES細胞及び本Zfp遺伝子の破壊株を用いて、H3K4me3とH3K27acのHiChIP解析を行い、特にOct4が強く関与しているエンハンサー領域とプロモーター領域におけるゲノム三次元構造の違いについて、解析を行う予定である。 ヒトiPS細胞でのホモログZNF遺伝子のノックアウト株作製も引き続き進め、神経分化誘導時の経時的遺伝子発現の推移を調べ、マウスでの遺伝子ネットワークと比較することで機能解析を進めていく。
|
Causes of Carryover |
本Zfp遺伝子はOct4という重要な分子との関連性があり、この分子メカニズムを詳細に解析するため、HiChIP解析を計画している。しかし、この解析には高額な受託解析費用が必要になるため、令和5年度使用予定であった額と次年度分を合わせた金額で、令和6年度にHiChIP解析を行う予定である。
|