2021 Fiscal Year Research-status Report
次世代型TnDR法による新生鎖動的挙動の網羅的解析
Project/Area Number |
21K15020
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
藤原 圭吾 京都産業大学, タンパク質動態研究所, 研究員 (10814907)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 翻訳アレスト / 新生鎖 / タンパク質成熟 / タンパク質局在化 / Tn-seq / MifM |
Outline of Annual Research Achievements |
新生ポリペプチド鎖はリボソームから細胞質に出現すると、翻訳の終結を待たずに成熟化過程へと進むことが示唆されているが、実際の細胞内でどの程度co-translationalな成熟化が起きているのかについて、網羅的な検証はほとんどなされていない。本研究は、細胞内で起きる新生鎖の動的挙動の規模とその発生メカニズムを網羅的に理解することを目的とする。そのために、申請者らが以前に発表したTnDR法を次世代シーケンサーと組み合わせ、ハイスループット化したTnDR-seqの確立を目指す。 本年度は、MifMの翻訳アレスト配列とスペクチノマイシン耐性遺伝子を用いたトランスポゾンを用意し、枯草菌PY79でTnDR-seqを大規模に行なった。まず分泌タンパク質や膜タンパク質に注目してシーケンスデータを解析したところ、分泌シグナルや膜貫通領域の前後で新生鎖の動的挙動が変化している様子が捉えられていた。この結果はTnDR-seqがうまく機能していることを強く示唆している。また、同様の実験を同じトランスポゾンや変異を加えたトランスポゾンで繰り返したところ、TnDR-seqの再現性が高いことが確認できた。これらの結果から、TnDR-seqの基本的な手法が確立できたと考えている。一方で、分泌装置の変異体を用いたTnDR-seqや遺伝学的な解析から、新生鎖の動的挙動に対して分泌装置の変異が与える影響を網羅的に解析するためには改善が必要なこともわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画通り枯草菌のPY79野生株で大規模にTnDR-seqを行った。まず1回膜貫通タンパク質や2回膜貫通タンパク質、分泌タンパク質などに注目してデータ解析を行った結果、事前に推測した通りの結果が得られた。同様の実験を同じトランスポゾンや変異を入れたトランスポゾンで繰り返したところ、TnDR-seqの再現性が確認できた。これらの結果から、TnDR-seqで新生鎖の動的挙動を捕捉できることが強く示唆された。現在は詳細なデータ解析を進めているところである。 一方で、新生鎖の動的挙動に対して分泌装置の変異が与える影響を網羅的に解析するために、局在化装置の変異株において予備的にTnDR-seqを行ったところ、野生株と比べて大きな差が見られなかった。遺伝学的解析でも、スペクチノマイシン耐性遺伝子を使用したセレクション方法では、野生株と変異株で差が大きくないことがわかった。これは翻訳アレスト解除が起きた細胞のセレクションにおける問題であると考えられ、ダイナミクスレポーターを改善していく必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
PY79野生株における解析は引き続き行う。既に得られたTnDR-seqのデータを用いて、どのようなメカニズムで翻訳アレストが解除されるのかを解析する。また、培養条件を変更してより多様なタンパク質の発現を促すことで、さらに多様な新生鎖の動的挙動を捉えられるか検証する。 また、ダイナミクスレポーターを改善する。MifMとは違う特徴を持つ翻訳アレスト配列を用いたダイナミクスレポーターを検討する。レポーター部分もスペクチノマイシン耐性遺伝子より適したものを探索する。これらの改変を通して、より多様な新生鎖の動的挙動を、より感度良く検出できるTnDR-seq法に改善する。
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