2021 Fiscal Year Research-status Report
Structural and functional elucidation of L-type amino acid transporter under lipid environment
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21K15031
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
李 勇燦 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 助教 (00894932)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アミノ酸輸送体 / クライオ電子顕微鏡 / ナノディスク |
Outline of Annual Research Achievements |
L型アミノ酸輸送体(LAT)は、LAT1とCD98hcからなるヘテロ二量体型アミノ酸輸送体に属し、抗がん剤や脳への薬物送達の重要な標的とされている。本研究は、クライオ電子顕微鏡を用いた、脂質環境下でのLAT1の構造解析とその薬物認識機構の理解を目的としている。LAT1の構造解析に向けて、哺乳類細胞を用いた発現系を構築した。輸送体を構成するサブユニットであるLAT1、CD98hcそれぞれをコードしたバキュロウィルスの共発現によって、L型アミノ酸輸送体を高収量で得ることができた。発現量および精製プロトコルの改善によって、高純度のLAT1-CD98hc試料を精製することができた。これをナノディスクに再構成し、予備的な電子顕微鏡像を得ることで、品質の高い試料が得られていることを確認した。 並行して、バインダーのスクリーニングを行った。分子量の小さいタンパク質をコードする合成ライブラリから得られたクローンをスクリーニングすることで、LAT1の膜ドメイン、あるいはCD98hcの細胞外ドメインに結合するバインダーの選定を行った。現在までに、高親和性で結合するバインダーを選定できている。 さらに、LAT1のホモログであるSLC7ファミリータンパク質に関しても、試料調製系の構築を行った。その結果、LAT2やy+LAT1に関しては、ナノディスクに再構成した試料を得て、クライオ電子顕微鏡を用いた測定を行った。b0,+ATに関しては、試料調製系を検討した結果、界面活性剤下での構造解析を進めることとした。現在までに、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析によって、原子モデルを構築できる分解能のマップが得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実施に伴い、研究代表者は、ドイツ・マックスプランク研究所から横浜市立大学に異動した。したがって、以前の所属先で構築した実験系を再現し、安定したタンパク質発現・精製系を構築することが課題となった。本年度は、哺乳類浮遊細胞の培養系、バキュロウイルスの作製系、アフィニティ精製系等の再構築と、ナノディスク等の作製系の再構築に注力した。その結果、これまでのプロトコルを踏襲しつつも、さらに収量の高い試料調製系を見出すことに成功した。また、異動に伴って、LAT1だけではなく、そのホモログの調製系も並行して新たに確立した。クライオ電子顕微鏡の試料凍結に関しては、試料の濃度、ブロッティング時間、グリッドの材質、ホール径などの操作可能なプロトコルのみではなく、気温、湿度、機械の特性など、操作しづらいパラメータが含まれた。したがって、試料凍結に関してはゼロから条件検討を行う必要があった。その結果、ホール径を従来よりも小さくすること、材質を銅から金に変えることで、従来よりも良い試料凍結が可能であることを見出した。バインダー分子に関しては、クライオ電子顕微鏡による観察には至っていないものの、ゲル濾過を用いたスクリーニングによって、高親和性のものを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
脂質環境下でのLAT1の構造解析に関しては、今後、ナノディスクに再構成したLAT1と阻害剤等を混合し、順次、クライオ電子顕微鏡による撮影を行う。高分解能を目指すため、グリッドの材質や凍結条件をさらに細かく検討する。バインダーを用いた分子量の増強も検討する。この際、バインダー分子により氷中での挙動が左右されるため、バインダーごとに凍結条件を細かく探索する必要がある。最適な条件を見出したら、5,000から10,000枚程度のクライオ電子顕微鏡像を撮影し、解析を行う。これまで、解析には主にオープンソースソフトウェアであるRELIONを用いてきたが、近年開発の進むクローズドソースソフトウェアであるcryoSPARCを用いると、解析の速度向上によるスループットが5倍以上であることがわかっている。そこで、初期の解析はcryoSPARCを主に用い、RELIONそのほかのソフトに特有の機能を利用する際は、データを変換の上、他のソフトウェアに移して解析を進める。リガンドの密度が判別可能な3.0 オングストローム程度の分解能に達したら、モデルを構築する。LAT1のホモログであるLAT2、y+LAT1、b0,+ATに関しても同様に解析を進める。進捗状況が良い場合は、リポソームへの再構成系も検討する。
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Causes of Carryover |
本年度より横浜市立大学生体膜ダイナミクス研究室に移り、研究を開始した。当研究室の部屋は、研究開始当時、基礎工事が終わっていない段階であり、引っ越しを控えて、仮の部屋を借りて研究を実施した。当初、基礎工事と引っ越しが年度中盤に終わる予定であったが、工事が大幅に遅れ、年度末に実際の引っ越しを行った。そのため、当初購入を予定していた機器類に関しては、機器の搬入が遅れること、部屋の寸法や電源が不明であることから、購入を見送った。次年度は、引っ越し後の研究室の寸法や電源に基づき、機器類の選定と購入を進める。また、研究開始前は情報が不足していた、共通機器類の存在が判明したため、共通機器として使用できる物品に関しては、それを生かすこととし、新規購入を見送った。次年度は、研究の実施上必要であり、かつ共通機器では賄えない物品の購入を検討する。
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Research Products
(3 results)