2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K15035
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
菊地 正樹 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (20742430)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アセチル化酵素 / アセチル化ヒストン / p300 / ヌクレオソーム / クライオ電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
p300は、白血病をはじめとする様々ながん細胞の増殖に密接に関わっているアセチル化酵素である。p300は主に核内に存在し転写因子等をクロマチンにリクルートするコアクチベーターである。構成ドメインのブロモドメインがヒストンH4の12番目と16番目のリジンのアセチル化(H4K12acK16ac)を認識することや、アセチル化酵素ドメインがヒストンを修飾することにより転写を制御している。抗がん剤標的分子として注目されているが、ヒストンアセチル化認識・修飾の分子機構と転写制御機構など未だ不明な点が多い。本研究では、p300・転写因子・アセチル化ヌクレオソームの複合体構造を明らかにし、p300によるアセチル化認識・修飾機構の構造基盤を解明することを目的としている。p300はヒストンや転写因子の相互作用ドメインが複数存在し、それらの相互作用がアセチル化活性に影響を及ぼすことが知られている。p300によるヌクレオソームに対するアセチル化機構を明らかにするため、p300・アセチル化ヌクレオソーム複合体を調製し、クライオ電子顕微鏡を用いてデータを測定した。測定データを単粒子構造解析することで、アセチル化ヌクレオソームに結合したp300の複合体構造が複数得られた。p300はヒストンH3やH2B、H2AにHATドメインが配向しており、様々なヒストンのアセチル化機構を示す構造であった。さらに、これらの複合体構造から、p300のブロモドメインによるDNA相互作用を介して酵素活性が制御されていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
p300・アセチル化ヌクレオソーム複合体を調製し、200kVおよび300kVのクライオ電子顕微鏡(Tecnai Arctica、Titan Krios)で複合体サンプルのデータを測定した。単粒子構造解析の結果、最大で3.2Åの分解能の密度マップが得られ、p300がヒストンH3やH2B、H2AにHATドメインが配向している分子モデルをモデリング・精密化し複合体構造を明らかにした。また、転写因子複合体構造を得るために転写因子STAT1の発現系構築を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
p300・アセチル化ヌクレオソーム複合体の単粒子構造解析から、その立体構造を明らかにしたが、細胞内におけるp300の酵素活性は転写因子との相互作用により亢進されることが知られている。そこで、p300に転写因子が相互作用した場合における、ヒストンアセチル化(HAT)機構を明らかにするため転写因子STAT1の発現系構築・精製を行い、p300・ヌクレオソーム・転写因子複合体の調製を進める。
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Causes of Carryover |
前年度までに購入した消耗品や機器類で研究を行ったため、支出はなかった。今年度は、これまでに調製していなかった転写因子STAT1のバキュロウイルス・昆虫細胞発現系を構築し、精製を行うため、消耗品(試薬・カラム)や機器類を購入する。
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