2022 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質の過イオウ化によるシグナル伝達機構の分子基盤
Project/Area Number |
21K15038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 隆之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (90817214)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シグナル制御 / システイン修飾 / 硫化水素 / パースルフィド / 細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者が光合成細菌から新規に同定した活性イオウ分子種(Reactive sulfur species; RSS)応答性転写因子SqrRのRSS応答機構および本細菌のRSS代謝系の解析を通じ、RSSシグナル伝達の分子機構を理解することを目指してきた。 細胞内におけるRSS代謝とSqrRによる制御系の関係性をより明確にするため、RSS代謝酵素が、細胞内のRSS量とSqrRによる転写調節の時間動態に与える影響について調べた。その結果、硫化水素酸化酵素をコードするsqr遺伝子を破壊すると、外来性硫化物によるSqrRの転写抑制能の不活化が持続せず、この転写調節の時間動態は細胞内RSS量の変化に相関することがわかった。一方で、硫黄転移酵素の一種であるロダネースをコードする遺伝子を破壊すると、sqr欠損とは逆の影響を見せることがわかった。これより、これらのRSS代謝関連酵素は、それぞれRSSの合成と分解に寄与することで、SqrRの転写調節に関わることが示唆された。 sqr欠損株におけるSqrRとRSS動態の減衰は、細胞へのシステインパースルフィド(CysSSH)の添加によって完全に回復するが、グルタチオンパースルフィド(GSSH)の添加では回復しなかった。さらに、RSS修飾に基づいたSqrRのDNAからの解離速度が、GSSHに比べてCysSSHでは速く生じることがわかった。また、質量分析から、CysSSHとGSSHで得られるRSS架橋生成物は異なることが示された。 これらの結果は、持続的なRSSの生成とSqrRを介したRSS応答性転写調節の間の新しい関係を確立するものである。
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