2022 Fiscal Year Annual Research Report
ハエトリソウを用いた植物の高速なカルシウムシグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
21K15047
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
須田 啓 埼玉大学, 理工学研究科, 産学官連携研究員 (40899192)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カルシウムシグナル / ハエトリソウ |
Outline of Annual Research Achievements |
ハエトリソウでは接触刺激に応じて植物で最も速いカルシウムシグナルの伝達が起こる。このことは,ハエトリソウにカルシウムシグナルを高速で伝達するための何らかのメカニズムが存在することを示唆しているが,神経を持たない植物で高速にカルシウムシグナルを伝達する情報伝達機構は未解明である。 昨年度までの研究から裏表皮細胞において接触刺激に応じたカルシウムシグナルが観察されることが明らかとなっていた。今年度は正立共焦点顕微鏡を用いた観察により、表側の表皮細胞層,および表から二層目の細胞層においても接触刺激に応じてカルシウムシグナルが生じる様子の観察に成功し,表表皮から裏表皮までの全ての細胞層でカルシウムシグナルが伝播している仮説が支持された。また,電位依存性カルシウムチャネルの特異的阻害剤によって接触刺激を受けていない周囲の細胞群でのカルシウムシグナルが抑制され,陽イオン濃度の高い溶液で灌流すると接触刺激に依存せずこれら細胞群でカルシウムシグナルが発生することが確認された。これらのことはカルシウムシグナルが活動電位依存的に生じている可能性を支持していた。また,細胞間連絡の閉鎖に寄与するシロイヌナズナPDLP5タンパク質を過剰発現させたハエトリソウ株を樹立したところ,接触刺激に応じた運動能を有することが明らかとなった。カルシウムシグナルの阻害によってハエトリソウの運動は阻害されるため,本実験からは細胞間連絡を介してカルシウムシグナルが伝播するという仮説は支持されなかったが,過剰発現株で細胞間連絡が閉鎖しているかの解析や,ハエトリソウの細胞間連絡関連遺伝子を用いた更なる解析が必要である。 以上の結果からカルシウムシグナルは表から裏表皮までの全ての細胞層において,細胞膜で活動電位依存的に生じている可能性が示唆された。
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