2021 Fiscal Year Research-status Report
近接ビオチン化酵素を用いたサリドマイドのインタラクトーム解析技術の開発
Project/Area Number |
21K15076
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山中 聡士 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 特定研究員 (50853884)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サリドマイド / CRBN / タンパク質分解 / ユビキチン / 近接ビオチン化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、様々な種類の培養細胞を対象に、AirID-CRBNを安定発現する細胞株を樹立しサリドマイド誘導体依存的なネオ基質のビオチン化解析系を構築した。ストレプトアビジンを用いたプルダウンアッセイによって、各培養細胞において代表的なネオ基質のビオチン化を確認した。さらに、その化学構造によってネオ基質選択性を示すことが知られているサリドマイド誘導体を対象に同様の解析を行なった結果、AirID-CRBNを用いたアプローチによってサリドマイド誘導体のネオ基質選択性が評価可能であることが示された。 より網羅的な評価系の構築のために、質量分析を用いた評価系の構築を行い、サリドマイド誘導体依存的な相互作用解析に有用なビオチン化ペプチドの濃縮法を決定した。構築した評価系を用いて様々な培養細胞を対象に質量分析解析を行なった結果、サリドマイド誘導体におけるネオ基質選択性の評価が可能であることを示した。さらに、サリドマイド誘導体間及び細胞間で異なるビオチン化ペプチドが検出することを確認した。 各細胞の質量分析データを基に、新規ネオ基質タンパク質に対する解析を行なった。結果として、ZNF536, ZNF687及びZMYM2はサリドマイド誘導体依存的にCRBNに相互作用することが示された。さらに、ZMYM2は内在レベルで分解誘導され、血液がんに関与するZMYM2-FGFR1融合タンパク質もまたネオ基質であることが示された。これらの結果は、本評価系がタンパク質分解剤のネオ基質同定に有用な技術であることを示している。 さらに、DCAF15へ相互作用しネオ基質RBM39を分解誘導するIndisulamを対象に解析を行なった結果。AirID-DCAF15はIndisulam依存的にRBM39をビオチン化した。この結果は、本評価系は様々なE3っリガーゼ及びタンパク質分解剤に応用可能であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の解析結果から、AirID融合E3リガーゼを発現する細胞を用いたタンパク質分解剤依存的な相互作用解析技術の構築に成功した。さらに、当初の計画に加えて、ビオチン化ペプチドの濃縮法の検討や近接ビオチン化酵素の比較を行うことで、タンパク質分解剤依存的な相互作用解析における最適な評価系の構築が可能となった。また、質量分析、生化学的及び細胞を用いた解析の結果新たなネオ基質を見出すことに成功し、見出したネオ基質は血液がんに関与する重要なネオ基質であることが示唆された。これらの結果から、当初の計画以上に発展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度では、近接ビオチン化酵素を用いたタンパク質分解剤依存的な相互作用解析系の構築を目指して研究を遂行してきた。今後は、質量分析により検出された新たな相互作用タンパク質候補を対象に生化学的および細胞を用いた解析を行い、新たなネオ基質およびタンパク質分解剤の作用機序における役割に関する解析を行う。また、サリドマイド誘導体やIndisulam以外のタンパク質分解剤に対しても同様の評価系で解析可能であるかを確認し、多様なタンパク質分解剤に応用可能であることを示す。
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Causes of Carryover |
当該年度は、近接ビオチン化酵素を用いた評価系の構築が当初の計画より順調に進み、当初の計画より少ない使用額で計画通りの成果を得られた。当該年度の解析の結果、様々な細胞株やタンパク質分解剤を用いた質量分析による解析が必要であることが予想されたため、次年度繰越しとした。
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Research Products
(3 results)