2021 Fiscal Year Research-status Report
Explore the dynamic behaviors of different chromosomes in mitosis
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21K15079
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
國安 絹枝 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (80843127)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 染色体分配 / ライブセルイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、任意の染色体を生きた細胞で可視化・追跡するシステムを用いて、分裂期を通した個々の染色体の動態にどのような差があるのかを明らかにすることを目的とする。細胞分裂の際、複製された姉妹染色分体は核膜崩壊後、微小管により形成された紡錘体上をモーター分子や微小管による制御を受け速やかに移動し紡錘体中央部へ整列し、双方向から伸びる微小管とそれぞれのキネトコアが結合することで娘細胞へと均等に分配される。一方で、多くのがんでは染色体数の異常が見られ、その背景には高頻度な染色体分配の失敗が存在する。申請者はこれまでに、紡錘体中央部に遅れて整列する染色体の分配異常頻度が高いことを見いだした(Biomolecules, 2019)。しかし、これまで技術的な問題から任意の染色体を生きた細胞で標識し、他の染色体と区別して観察することは困難であり、どのような染色体が整列する際に遅れやすいのかという問題については解明できていない。そこで、本研究では、CRISPR-dCas9法を応用した染色体ラベリングシステムを構築し、任意の染色体を蛍光標識した細胞株を正常細胞株およびがん細胞株を用いて作出し、それらにおいて染色体分配時のライブセルイメージングを行い分裂期を通した任意の染色体動態を解析した。個々の染色体の動きを調べることにより、どのような染色体が遅れて整列し、分配異常へ至りやすいのかを明らかにする。本研究は、がん細胞で特徴的に見られる染色体分配異常の発生要因に対する理解に貢献するものと考えられるとともに、染色体の動きを一まとめとして区別なく観察していたこれまでの染色体動態研究とは異なり、個々の染色体の動態特性を明らかにする新規性の高い研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生きた細胞を用いた任意の染色体標識は、これまで間期の細胞で行われており、分裂期の染色体動態の観察には使われていなかった。本研究では、技術的に困難な任意の染色体を可視化した細胞株を正常細胞株およびがん細胞株において作出し、その動態を観察することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で作出した、任意の染色体が標識された細胞株を用いて、分裂期を通した個々の染色体の動きのさらなる詳細な解析を進めていく予定である。核膜崩壊後、染色体は様々なモーター分子の機能により紡錘体中央部へと運ばれていく、この時の個々の染色体腕部にかかるモーター分子による動きへの影響の違いを染色体間で比較することで明らかにする。また、細胞を微小管の重合阻害剤であるノコダゾールで処理して分裂期の進行を止めると、染色体の凝集が進行することが知られている。そこで、細胞をノコダゾールで長時間処理し、染色体の大きさの変化を誘導することで、染色体の長さを短縮させた時の染色体動態への影響を明らかにする。さらに、正常細胞株とがん細胞株とで比較することで、個々の染色体が持つ動態の違いと、それががん細胞でどのように変化して高頻度の染色体分配異常につながるのかを明らかにする。上記の実験を行うことで、個々の染色体での詳細な動態特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
物品費においては、当初予定していた任意の染色体標識システムを用いた細胞株の作成に予定以上の時間がかかり、そのため本年度必要としていた物品費の使用を次年度に行う。また、旅費に関しては、コロナ禍のため現地に赴く形式の学会発表が行われず、オンライン形式による学会発表が行われたため、本年度必要としていた旅費の使用を次年度に行う。次年度の使用計画としては、物品費は、主に細胞培養に用いる血清・培地及びガラス器具、染色体の動態解析に用いる酵素・試薬及び抗体に使用する。また、旅費は、学会発表に使用し、その他は、学会誌投稿費に使用する。
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