2023 Fiscal Year Annual Research Report
一次繊毛における新規機構「分子コンバータ」システムの解明
Project/Area Number |
21K15096
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 孝信 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (80844935)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 一次繊毛 / シグナル制御 / メカノセンサー / カルシウムイメージング / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞から伸びたアンテナのような小器官である一次繊毛は、細胞外環境を感知するセンサーとしてはたらく。これまでの研究から、細胞外の流れ刺激に対して繊毛内でカルシウム応答が見られることは知られていたが、その下流のシグナルカスケードに関しては未解明な点が多い。本研究課題では、この一次繊毛というアンテナが、どのように細胞に情報を伝達し、制御するのかを明らかにすることを目的とした。 初年度は「フローチャンバーを用いて腎臓由来の培養細胞に細胞外流れ刺激を与える系」を構築した。2年目はこの実験系を用いて、「繊毛の中で細胞外流れ刺激によってどのようなタンパク質の増減やリン酸化修飾が起きるのか」を知るために、繊毛内プロテオーム解析系を立ち上げた。最終年度である3年目はプロテオーム解析を行い、いくつか候補因子を得た。 また、その研究を進める中で、マウス初期胚のノードの一次繊毛 (マウスノード不動繊毛) において、繊毛内のタンパク質局在に異方性があり、繊毛が曲げられる向きを感知している可能性があるという驚くべき結果を得た (Katoh et al., Science, 2023)。さらに最終年度においてはこの研究も発展させ、繊毛内のチャネルタンパク質の偏りと曲げ方向の向き感知の対応関係を明らかにし、チャネルタンパク質の偏りを生みだす分子メカニズムの一端を明らかにし、現在投稿中である。 総じて振り返ると、3年間で一次繊毛の新たな機構である曲げ方向受容を明らかにし、その分子機構の一端にも迫れたことから、想定以上の進展を見せたと言える。
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