2021 Fiscal Year Research-status Report
シングルセル解析によるホヤ幼生の尾部に存在する双極型感覚神経細胞の分化機構の解明
Project/Area Number |
21K15099
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
堀江 良子 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(PD) (90894907)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ホヤ / 単一細胞トランスクリプトーム解析 / 神経細胞 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、申請者らが行ってきた個体丸ごとの単一細胞トランスクリプトームデータを利用することにより、ホヤ幼生の神経系に存在する神経細胞のうち、尾部に存在する双極型感覚神経細胞(BTNs)の分化機構を解明することを目指している。 単一細胞トランスクリプトーム解析の結果、最終分化した感覚神経細胞で特異的に発現する転写因子としてPOUIVを同定した。POUIVの機能阻害実験を行ったところ、表皮感覚神経細胞の分化が抑制された。さらに、POUIVの過剰発現実験を行ったところ、表皮感覚神経細胞が異所的に分化した。表皮細胞全体でPOUIVを過剰発現させた胚において、単一細胞トランスクリプトーム解析を行ったところ、異所的に分化した神経細胞群は、BTNsと似た遺伝子発現パターンを示すことが分かった。POUIV過剰発現胚において、発現が上昇した転写因子としてNeurogeninを同定した。POUIVの機能阻害を行うとBTNsにおけるNeurogeninの発現は消失した。一方、Neurogeninの機能阻害を行うとBTNsにおけるPOUIVの発現は失われ、BTNsは消失した。これらの結果から、両者がお互いを活性化するフィードバックループがBTNsの分化に重要である可能性が示された。続いて、Neurogeninのエンハンサー解析を行い、BTNs特異的な最小エンハンサー250bpを同定した。このBTNs特異的最小エンハンサーにはPOUIV結合配列が8個存在していた。この8個のPOUIV結合配列に変異を導入すると、BTNsにおけるレポーター遺伝子の発現は消失した。以上の結果から、POUIVがNeurogeninの遺伝子発現を活性化していることが明らかとなった。本研究により、POUIVおよびNeurogeninがお互いを活性化するフィードバックループがBTNsの分化に重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
単一細胞トランスクリプトーム解析と実験発生生物学的な手法を組み合わせた研究の結果、本研究課題の目的としている、ホヤ幼生の神経系に存在する神経細胞のうち、尾部に存在する双極型感覚神経細胞(BTNs)の分化機構を解明することに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、POUIV, neurogeninの下流でBTNsの分化に関連する因子の同定を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大による納品の遅れのため。次年度に物品費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)