2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K15109
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
金丸 佳織 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 助教 (40838637)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞膜 / リン脂質 / 造血幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
全ての血液細胞は、造血幹細胞より発生する。これまで、造血幹細胞から各種血液細胞への分化に関与する転写因子やエピジェネティック因子は多数報告されているが、血液細胞分化における細胞膜脂質の果たす役割は未だ不明である。申請者は、これまでに細胞膜リン脂質の一つが上皮細胞らしさの決定、維持に関与することを明らかにし、この過程で、細胞膜リン脂質が上皮細胞以外の細胞においても細胞の個性や運命の決定に関与する可能性を想定した。そこで造血幹細胞からのB細胞の発生・分化において細胞膜リン脂質がどのような役割を果たすのかを明らかにすることを本研究の目的とした。本研究により、造血幹細胞からのB細胞発生、分化機構についての理解を深められること、さらには新たな治療戦略の開発へとつながることも期待される。当該年度の研究では、まず細胞膜リン脂質を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリー法による細胞膜リン脂質量の測定を試みた。その結果、細胞膜リン脂質合成酵素や分解酵素の発現による細胞膜リン脂質量の増減を検出することに成功した。加えて、細胞膜リン脂質合成酵素の発現による細胞膜リン脂質量の増加は、人工白血球幹細胞のB細胞への分化能に影響を及ぼすことも明らかにした。一方で、細胞膜リン脂質分解酵素の発現による細胞膜リン脂質量の減少は、人工白血球幹細胞の幹細胞性を失わせることを示唆する結果も得られた。これらの結果より、細胞膜リン脂質は、上皮細胞だけでなく、血液細胞においても細胞性質を変化させる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究では、フローサイトメトリー法により細胞膜リン脂質の検出に成功しており、この技術をもとに血液細胞の分化や運命決定における細胞膜リン脂質量の解析へと研究を進めることができている。また、細胞膜リン脂質量を増加させた人工白血球幹細胞では、B細胞分化への影響が見られており、B細胞運命決定における細胞膜リン脂質の役割の解析へと研究を進めることができている。このため、研究がおおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞膜リン脂質の近傍タンパク質の網羅的同定を行い、B細胞分化制御に関わる細胞膜リン脂質の近傍タンパク質についての解析を行う。また、細胞膜リン脂質の変化が人工白血球幹細胞の幹細胞性へ与える影響についても、より詳細な解析を行なう。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに実施できているが、実験計画として近傍タンパク質の探索等の実験を次年度行うことにしたため。
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Research Products
(10 results)