2022 Fiscal Year Research-status Report
Lineage dynamics and heterogeneity of primordial germ cells producing primordial follicles
Project/Area Number |
21K15111
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
池田 達郎 基礎生物学研究所, 生殖細胞研究部門, 特任助教 (60803963)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マウス / 始原生殖細胞 / 原始卵胞 / 細胞系譜 / クローン / バーコード / 不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では雌マウス胎仔の始原生殖細胞(PGCs)を非常に多様なDNAバーコードで標識して子孫細胞(クローン)を追跡することにより、個々のPGCのクローンが生じる原始卵胞の数と質の不均一性を解析する。 2021年度において卵巣に入った2000個程度のPGCsにバーコードを導入したのち、その後の原始卵胞が生じた生後10日までの複数の発生段階で卵巣を取得し、生殖細胞に含まれるバーコードをSequelシーケンスしていた。2022年度はまずそのシーケンス結果が届いたので解析した。卵巣に入ったPGCsは減数分裂を開始し、細胞死を伴いながら生後10日までに1/3まで細胞数が減少することが知られている。この過程で、バーコードの種類数は半分程度に減少すること、一方で200以上の多様性を維持していることが示唆された。これはPGCsが合胞体(シスト)を形成しシストあたり1つの卵母細胞を作り出すことを提唱した先行研究と矛盾しない結果であった。 2021年度の解析から、PGCsが遊走して卵巣に入る過程でクローンサイズの不均一性が生じることがわかっていた(この観察は雄と同様)。このとき、クローン間で遺伝子発現の違いがどのように存在するかを知るため、バーコード転写型マウスを用いて、誘導直後のPGCsをバーコード標識したのち、卵巣に入ったPGCsをFACSソートし、シングルセルでcDNAを増幅した。産物をもとにシングルセルRNA-seqおよびバーコードシーケンスのライブラリをそれぞれ作成し、シーケンス発送した。 本研究と並行して進めている雄生殖系列の研究が先に発展しており、2022年度は主に雄の成果を学会等で発表したが、付随して雌のデータを基に両性間の相違を議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究と並行しておこなっている雄の生殖系列の研究が大きく進行しているため、雌の研究の進行は緩やかであるが、それでも雌の生殖系列の特性を示唆するクローン多様性の時間変化データを得ることができた。 また、本研究計画の柱である雌生殖細胞のシングルセルでの遺伝子発現とバーコードの同時測定実験を、サンプル取得からライブラリ作成・発送まで、一連として達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
バーコード種類数の解析については個体数を増やす。また、リード数を基に有意なバーコードを抽出してより厳密に評価する必要があるため、共同研究者(ドイツのバーコード開発者・理論生物学者)と密接に議論して解析を進める。そこからクローンのサイズ分布に関しても評価を進める。 2022年度末のシングルセルRNA-seq・バーコードのシーケンスデータが届いたら、Cell Indexをもとにシングルセルごと遺伝子発現とバーコードの紐付け解析を行い、クローンごとの遺伝子発現特性を解析する。そこから、クローンサイズ(個々のクローンの細胞数)と相関する遺伝子発現特性を探索し、さらに発生段階との相関も検証する。 また、卵巣に入ったPGCsをバーコード標識し、原始卵胞が形成された新生仔の段階で同様のシングルセル遺伝子発現・バーコード測定解析をおこなう。クローンごとに形成された卵母細胞数と、活性化or休眠卵母細胞の比率を計算する。個々のPGCが作り出した休眠卵母細胞数の不均一性と、相関する遺伝子特性を探索する。
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Causes of Carryover |
今年度までに雌生殖系列のクローン動態、およびシングルセルの遺伝子発現とクローン情報の同時測定を駆け出しで達成することができた。一方で、更なる個体数および発生段階でのデータ取得・解析が引き続き必要であると判明した。そのため、次年度も継続して生物学実験、および学会等における議論を行う。ゆえに、物品費、旅費、その他費用を次年度使用額として用意している。 次年度は特に雌マウス新生仔の卵母細胞のシングルセル遺伝子発現・バーコード同時測定実験を計画している。そのためのマウス飼育、実験試薬、プラスチック器具、シーケンス外注の費用、および得られたデータを国内外で発表して議論するための出張経費として使用する計画である。
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