2021 Fiscal Year Research-status Report
Understanding the molecular mechanism of development of gall
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21K15115
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
別所 奏子 (別所・上原奏子) 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (90876624)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 虫こぶ / 寄生植物 / 生物間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
虫こぶ形成昆虫とその宿主植物の飼育は困難であったが、富山大学の土田博士らによりマダラケシツブゾウムシ(以降マダラ)とアメリカネナシカズラ(以降cuscuta)の飼育系が確立された。本研究ではこのマダラーcuscutaの飼育系を用いて虫こぶ形成の分子機構を明らかにすることを目指す。 本年度は、マダラから分泌される「虫こぶ誘導因子」の同定を目的とし、研究を行った。 具体的には(1)卵期、幼虫期、成虫期のマダラのRNA-seq、(2)3段階の大きさのcuscuta虫こぶのRNA-seq、(3)cuscutaカルス誘導、(4)宿主植物を通じたcuscutaの形質転換、の4つを実施した。これまでにマダラの産卵管由来物質もしくは卵に初期虫こぶ誘導活性があることが見出されていることから、(1)においてはマダラ卵期および成虫期に高発現しているものを絞り込んだ。また(2)のcuscuta側の発現応答解析により、花芽形成に関連する遺伝子群が初期虫こぶで有意に発現上昇していること、どのステージの虫こぶでも植物ホルモンに応答する遺伝子群が発現変動していることを見出した。また、同定した昆虫由来の遺伝子群の機能・効果を宿主植物において確かめるため、(3)(4)のシステム立ち上げを試みた。(3)についてはカルス誘導には成功したものの生育が悪く、細胞分裂活性検証に使用することは難しいと判断した。(4)については宿主植物であるタバコの形質転換まで終了し、次年度以降にcuscutaへのタグ融合タンパク質の移動やmRNAの移動を確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵期、幼虫期、成虫期のマダラを用いたRNA-seqデータを解析し、幼虫期特異的、および卵期・成虫期特異的に高発現しているものをそれぞれ絞り込んだ。興味深いことに各時期で高発現しているもののうち約20%がN末端に分泌性シグナルを持つことが明らかとなった。このことは幼虫や卵、成虫から多くのタンパク質が宿主植物内に分泌されていることを示唆している。また、初期、中期、後期と区分した各ステージのcuscuta虫こぶにおけるRNA-seq解析により初期虫こぶにおいて花芽誘導に関わる遺伝子群が、昆虫を接種していない蔓に比べて発現上昇していることがわかった。これまでに報告のある虫こぶのRNA-seqにおいても花芽形成に関わる遺伝子群が同定されている(Schultz et al. 2018; Takeda et al. 2019; Hirano et al. 2020)。このことは被子植物に広く保存されている花芽形成機構を虫が利用して虫こぶ形成を誘導していることを示唆している。また、(1)により同定した虫こぶ誘導因子の機能をcuscuta内で検証するために、cuscutaのカルス誘導を試みた。オーキシンとサイトカイニンを複数の濃度で組み合わせた培地でcuscutaを培養し、カルス誘導が見られる条件を同定した。しかし誘導されたのは茶色く固化したカルスであり増殖はほとんど見られなかったことから、虫こぶ誘導因子の投与による細胞分裂活性促進は期待できない。条件検討に時間と労力がかかることから、一度カルス誘導系の確立は中断することとする。また、他の検証方法として、宿主植物を介したcuscutaの形質転換を申請書にて提案した。本年度はGFP融合過剰発現コンストラクトを作成し、タバコの形質転換系を立ち上げるところまで至った。本年度は、育休取得のため研究活動期間が半年となったが上記のように順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は宿主植物を介したcuscuta形質転換系の確立を目指し、マダラRNA-seq解析により絞り込んだ虫こぶ誘導因子をクローニングしてタバコで過剰発現させ、cuscutaに移動して表現型変化を誘導するか検証実験を行う。また、花芽形成遺伝子群や植物ホルモンが虫こぶ誘導初期に重要であることが明らかとなったため、これらの遺伝子の発現をRNAiで抑制し、RNAi体においてはマダラを接種しても虫こぶが誘導されないか検証する。また、生化学的に昆虫由来の分泌性虫こぶ誘導因子を同定するため、野外からマダラを十分数捕獲する必要がある。
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Causes of Carryover |
令和3年の4月から9月まで半年間育児休業を取得し、令和3年度の研究計画で計上した研究費の使用に至らなかった。次年度においては、分子生物学実験に使用する試薬代、RA雇用費、出張費、学会参加費、論文発表費に使用する。
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Remarks |
第8回東北植物学会奨励賞受賞
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