2021 Fiscal Year Research-status Report
データ駆動型アプローチによる植物の上下軸形成機構の解明
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21K15117
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木全 祐資 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (10893307)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胚発生 / 細胞極性 / トランスクリプトーム / ライブイメージング / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
受精卵の不等分裂は、植物の上下軸形成に必須の過程である。しかしながら、順遺伝学的な変異体スクリーニングでは、制御因子が得られておらず、詳細な分子機構は不明なままである。当研究室の解析から受精後の転写活性化が不等分裂に必要であることが示されたが、具体的にどの遺伝子の発現が上昇するのかはわかっていなかった。そこで我々は、分裂後の受精卵を顕微鏡下で単離しRNA-seq解析によって網羅的な遺伝子発現を明らかにすることに成功した。この解析を、受精後の転写が起こらないせいで不等分裂に失敗する変異体でも実施して野生型と比較したところ、変異体では200程度の遺伝子の発現量が低下していることを突き止めた。さらに、他のグループで受精前と受精後の遺伝子発現を比較したデータを照らし合わせたことで、変異体で発現低下した遺伝子のうち、約70の遺伝子が通常であれば受精後に発現上昇することがわかった。そこで、この70遺伝子の内、既知の遺伝子機能をもとに不等分裂に関わる可能性が高いと考えられるものを選抜し、ストックセンターから遺伝子破壊株を購入した。これらの胚発生の表現型を観察したところ、いくつかの遺伝子の欠損株では成熟胚の形態や分裂パターンに異常があり、受精卵の不等分裂が損なわれる欠損株も発見することができた。今後はこれらの遺伝子の細胞内局在や具体的な機能について、ライブイメージング解析を用いて調べることで、受精卵の不等分裂の分子機構の解明につながると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
受精卵のトランスクリプトームデータをもとに、既知の情報を組み合わせて不等分裂を担いうる遺伝子を選抜することで逆遺伝学的な探索を進めた結果、これまで全く明らかになっていなかった不等分裂の実働因子の候補を多数同定することができた。これらの機能を明らかにすることで、植物の体軸形成の分子機構の解明に大きく貢献できる。
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Strategy for Future Research Activity |
欠損株の解析から不等分裂に関与することが示唆されたいくつかの遺伝子について、まず蛍光タンパク質の融合マーカー株を作出し、ライブイメージング解析によって、不等分裂に至るまでの細胞内局在を観察することで、機能を推測する。また、欠損株に細胞骨格やオルガネラなどのマーカーをそれぞれ導入することで、欠損株の受精卵で細胞内のどのような動態が損なわれるのかを評価する。
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Causes of Carryover |
当該年度に必要とする物品および消耗品の購入が完了したため。次年度使用額は翌年度の消耗品費にあてる。
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Research Products
(4 results)