2023 Fiscal Year Research-status Report
植物の細胞間情報伝達を司る生理活性糖鎖AMORによる糖鎖シグナリングの解明
Project/Area Number |
21K15119
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
郡司 茜 (水上茜) 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (00778558)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 糖鎖シグナリング / AMOR / トレニア / 花粉管 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の細胞壁に多量に含まれる糖鎖を介した細胞間シグナリングは、極めて重要と想定されてきたにも関わらず、これまでよく知られていなかった。このような中、我々は被子植物トレニアにおいて花粉管に胚のうからの誘引物質への応答能を付与する胚珠由来の因子AMORがアラビノガラクタン(AG)糖鎖であることを同定した。AG糖鎖は植物特有の糖タンパク質で細胞壁中に多量に存在するAGタンパク質の糖鎖部分である。有機化学合成を用いた解析から、AMORの活性中心がAG糖鎖の末端に存在するメチルグルクロノシルガラクトースであることを明らかにした。しかし、依然としてAMORの生合成経路や作用メカニズム、相手細胞での細胞内シグナリングなど、植物糖鎖シグナリングの本質ともいうべき多くのことが解明されていない。 本研究計画では、AMORの生理活性部位として同定したメチルグルクロノシルガラクトース(AMOR二糖)に着目し、その糖鎖シグナリングを明らかにすることを目指している。 これまでにAMORの普遍性を検証するために、トレニアの近縁種であるウリクサ花粉管でもAMOR二糖と反応することで胚珠に対する誘引能が上昇することが明らかにした。さらにメチルグルクロノシルガラクトースのモノクローナル抗体を作出し、シロイヌナズナにおいてグルクロン酸メチル基転移酵素を欠失した変異体を作製している。今年度はAMORの花粉管に対する形態学的な解析を行った。その結果、AMORを含まない培地条件下では、培地上で発芽して伸長した花粉管も、花柱を通過して培地上を伸長している花粉管もどちらもカロースプラグが形成される間隔に差はなかった。一方で、AMORを含んでいる培地では、花柱を通過した花粉管のみカロースプラグの形成が促進されるというAMORの新たな機能が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、AMORが花粉管に与える新たな変化として、花柱を通過した花粉管のカロースプラグの形成を促進することを明らかにした。さらに、化学合成したAMOR二糖でもカロースプラグの形成が促進され、AMOR二糖が多価になるほどnative AMOR(胚珠からの滲出液に含まれているAMOR)の値に近くなる傾向が見られた。この結果と、AMOR誘導体(AMOR二量体、三量体、四量体)のAMOR活性の計測結果とを合わせて論文にまとめることができた(Mizukami et al., BioRixv, doi: https://doi.org/10.1101/2024.01.30.574946)。。しかし、シロイヌナズナの花粉管に対するAMORの普遍性に関する実験を進めることができなかったため、次年度ではこの解析を中心に行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度できなかった、シロイヌナズナの花粉管に対するAMORの普遍性を明らかにする。すでに作出したグルクロン酸メチル基転移酵素の二重変異体において、メチル基の有無を確認した後に、その表現型を詳細に解析する。さらにメチルグルクロノシルガラクトースを始めとする各種糖鎖の変異体についても同様に検証する。
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Causes of Carryover |
今年度は翌年度に自身の異動に伴う実験機器の引越しやセットアップが見込まれていたため。翌年度には、これらの費用や研究計画に推進に必要になった機器の購入に充てる予定である。
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