2022 Fiscal Year Research-status Report
イネ種子発芽を温度に応じて制御する転写調節モジュールの解析
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21K15120
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
吉田 英樹 福島大学, 食農学類附属発酵醸造研究所, 特任助教 (10814353)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 発芽 / GWAS / ゲノム / 植物ホルモン / シグナル伝達 / アブシジン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の一生において最も重要なイベントの一つである発芽について、食糧生産において非常に重要な穀物であり、モデル植物であるイネを材料として、温度依存的な発芽調節機構についてGWASを用いて解析することを本研究課題の目的としていた。 これまでに、イネ164品種の15℃条件および30℃条件における発芽の程度を表現型としたGWAS解析により、11番染色体に座上する遺伝子GF14hにおける4bpのindelがが温度依存的な発芽調節に関わることを見出した。さらに、GF14hがbZIP型転写因子OREB1およびペプチドホルモンとして機能するHd3aと同じファミリーに属するMFT2と三者複合体を形成すること、そしてOREB1の転写活性化能をGF14hが阻害し、MFT2はさらにそのGF14hによる転写抑制能を阻害することを見出した。さらに形質転換植物を用いて、GF14hがアブシジン酸(ABA)シグナル伝達を介して30℃において発芽調節に関わることを明らかにした。 本年度において、GF14hがOREB1のC末端のリン酸化部位を認識することでOREB1と結合することが、上述のGF14hならびにMFT2によるOREB1の転写活性化能の制御に関わっていることを明らかにした。一方で、これらの結合自体は温度変化には依存していないことから、GF14hの機能の温度による変化は、アブシジン酸シグナル伝達の温度依存性に依ると推測した。上述のOREB1-GF14h-MFT2モジュールによる転写調節メカニズムおよび発芽制御におけるGF14h遺伝子の機能を明らかにした論文を「Nature Cummunications」誌に投稿し、掲載された。 GWASを行うために収集したイネの多型情報、ならびにGWAS解析のために収集したイネ品種の表現型解析によりABAシグナル伝達に関わると思われる新規関連遺伝子および多型情報を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
OREB1-GF14h-MFT2によるOREB1のリン酸化を介した三者複合体形成とその転写調節メカニズムおよび発芽制御におけるGF14h遺伝子の機能を明らかにした論文は学術雑誌に掲載されるに至っており、さらなるABAシグナル伝達因子とGF14h-OREB1-MFT2モジュールとの関連性についての解析に研究が進んでいることは当初の計画以上に本研究が進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
GWASを行うために収集したイネの多型情報、ならびにGWASのために収集したイネ品種の表現型解析によりアブシジン酸シグナル伝達に関わると思われる遺伝子および多型情報を取得している。アブシジン酸応答が当該多型で変化する可能性を予備実験から見出していることから、本研究計画の発展的研究として当該新規アブシジン酸関連遺伝子とGF14h-OREB1-MFT2モジュールとの関連性について検討を進める。
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Causes of Carryover |
本研究を遂行するにあたり必要と思われていた実験が他の研究内容の遅延により延期になったものがあったことで次年度使用額が生じた。 次年度使用分は当該実験を実施するための消耗品等の物品購入費または人件費に充てることを計画している。
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