2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K15122
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
嶋川 銀河 関西学院大学, 生命環境学部, 助教 (60853885)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光合成 / 細胞電流 / 酸化的ペントースリン酸経路 / シアノバクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績1:シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803において酸化的ペントースリン酸経路(OPPP)がプラストキノンプールの還元に担う役割を明らかにし、その細胞電流への影響を解明した。本課題のねらいは、細胞外電極によるプラストキノンプールの酸化を通して、光合成電子伝達のリミッター(RISE)を解除し、光合成の促進を実現することであるが、課題で対象とする光合成微生物シアノバクテリアではチラコイド膜上に光合成と呼吸、2つの電子伝達系が存在しており、光非依存的なプラストキノンプールの酸化還元を考慮する必要がある。今年度の研究計画を遂行する中で、OPPPがプラストキノンプール還元を主要に担う呼吸関連代謝であることが明らかとなり、またOPPPによるプラストキノン還元が細胞電流の大きさを決める1つの要因であることが分かった。本研究実績は国際学術専門誌Photosynthesis Researchに公表済みである(Hatano et al. 2022 Photosynthesis Research In press, https://doi.org/10.1007/s11120-022-00903-0)。 研究業績2:Synechocystis sp. PCC 6803において光合成、呼吸、サイクリック電子伝達系の活性を半定量的に解析することに成功した。細胞外電極を用いてシアノバクテリアのプラストキノンプール酸化をねらう本申請課題では、チラコイド膜上に存在する各電子伝達系について、その生理活性を大まかに知っておくことが不可欠である。本実績ではグリコールアルデヒドがOPPP阻害剤として働くことを見出し、野生株を用いて光合成、呼吸、サイクリック電子伝達の評価に成功した(Kusama et al. 改訂中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画の1年目より所属の変更があったが、当初想定していたよりも効率的に新旧二つの所属先を両立し、本課題においては、実験実施先である大阪大学での研究遂行に専念することができた。 当初の研究計画では、シアノバクテリアの光電流が単純に光強度やチラコイド膜電子伝達系の過還元に由来するものであると仮定していたが、実験を進める上で酸化的ペントースリン酸経路のような細胞内代謝の影響を大きく受けることが明らかとなった。これによって、当初の予定であった「光電流のコントロールによるRISE制御」に関する実験の進捗は計画と比べ遅れているが、その一方でシアノバクテリアにおける光電流生成の分子メカニズムに関する重要な成果を上げることができた(Hatano et al. 2022)。本研究成果で得られた知見は、若手研究プロジェクトにおいても重要なものである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に基づいて、引き続きシアノバクテリアにおける電気化学的なRISE制御の試験に取り組む。2021年度の研究成果(Hatano et al. 2022)より、シアノバクテリアにおける光非依存的なプラストキノンプールの還元は、主に酸化的ペントースリン酸経路(OPPP)によって行われることが明らかとなった。すなわち、RISE解除を目的として細胞外電極によるin vivoでのプラストキノン酸化を実現するためには、OPPPによって供給されるNADPHを新たに考慮する必要がある。言い換えれば、Hatano et al. (2022)で用いたOPPP変異体では、野生株と比べて、条件次第で光照射下においてもプラストキノンプールが比較的酸化されている可能性があり、次年度の研究計画では、進捗次第で新たにOPPP変異体を用いたRISE解析を実施項目に加える可能性がある。
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