2021 Fiscal Year Research-status Report
葉緑体光定位運動における新規制御因子ARF/ARLファミリータンパク質の機能解明
Project/Area Number |
21K15127
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
比嘉 毅 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 特任研究員 (40772819)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 葉緑体運動 / フォトトロピン / 細胞骨格 / GTPase / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の生存に重要な光応答反応である葉緑体光定位運動(以下葉緑体運動)に関わる新規因子として、ADP-ribosylation factor(ARF)およびADP-ribosylation factor-like protein (ARL)ファミリーに属するいくつかの因子が同定されている。本研究ではその詳細な機能を明らかにすることを目的として、ARF/ARLの局在および動態の観察を中心としたイメージングと、ARF/ARL自身の活性制御機構解明を目指した相互作用因子の探索を行う。 初年度は、複数同定されているARF/ARLファミリータンパク質の多重変異体作成と、GFP-融合型のARF/ARLタンパク質を発現する形質転換植物の作成を進行した。過去の実験では、arfおよびarl単独の変異体で葉緑体運動が有意に低下することが明らかであるものの、完全に反応が失われることはなかった。これは複数のARF/ARLが冗長的に機能する可能性を示唆しており、多重変異体を用いてのさらなる検証が求められる。 またGFPを融合したARF/ARL発現株の作成は、対象となるタンパクのイメージングに用いるだけでなく、ARF/ARLとの相互作用因子の探索を目的とした生化学実験を行う上で、GFPを抗原として用いることができるという利点がある。 さらにphot-GFPやCHUP1-YFP発現株、葉緑体運動に重要なアクチン繊維を可視化したGFP-mTalin株等と、arfおよびarl変異体の掛け合わせを行なった。次年度以降、変異体における各因子の動態観察を行い、その影響を検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた実験のうち、arf/arlの多重変異体の作成に成功し、また既知の葉緑体運動制御因子を可視化した植物と、arfまたはarl変異体の掛け合わせも完了している。GFP融合型の目的タンパク質を発現する形質転換植物の作成も概ね完了している。複数あるARF/ARLのうちクローニングの難しいものがあったが、それについてもコンストラクトの作成は完了しているため、引き続きマテリアルの作成を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の前半では、初年度に作成した多重変異体について、葉緑体光定位運動への影響を評価するための生理実験を行う。また、初年度中に完成に至らなかったマテリアルの作成を継続する。 本年度の後半を中心にイメージングを行い、ARF/ARLタンパク質の局在や、異なる光環境下での動態を観察する。またARF/ARLの発現を欠く変異体において、光受容体photの局在や、葉緑体の運動機構に必須のアクチン繊維の動態などに影響があるか、詳細なイメージングによって検証し、ARF/ARLの機能解明につなげる。 本年度の後半から次年度以降にかけて、生化学を用いたARF/ARL相互作用因子の探索を行う。低分子量Gタンパク質であるARF/ARLに相互作用し、活性を調節するGEFやGAPの同定を目指し、光受容体信号伝達系との関与について検討を行う。
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Causes of Carryover |
葉緑体運動についての生理実験や、葉緑体特異的アクチン繊維の観察に適した顕微鏡装置を使用するための出張をいくつか予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響から取りやめとなった。そのため旅費や、出張時の実験で使用予定であった物品費等、未使用額が生じている。 これら出張を要する実験は次年度に改めて行う予定である。
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