2021 Fiscal Year Research-status Report
珪藻の被殻形成スイッチをONにして、被殻形成関連タンパク質を探索する
Project/Area Number |
21K15131
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
野村 真未 山形大学, 理学部, 助教 (40770342)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイオミネラリゼーション / 珪藻 / 有孔虫 / 珪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
珪藻の被殻は細胞内の特殊な小胞(珪酸沈着小胞)に珪酸が沈着することで形成される。細胞骨格が珪酸沈着小胞の形を制御することによって被殻形態が決定される。しかし、実際にどのようなタンパク質が関与しているかは明らかになっていない。本研究では、有孔虫に共生する珪藻という、珪酸質の被殻形成をOFFからONに切り替えることが可能な画期的な系を用い、遺伝子発現の経時変化を単細胞RNA-seqにより解析することを目的とした。初年度である2021年度はコロナ禍のため行動が制限され、材料である有孔虫を手に入れることに苦労した。琉球大学藤田和彦教授の協力を得て、異なる5種の珪藻を共生させる有孔虫を5個体ずつ入手した。これらの種のうち、飼育のしやすさを判断するため、6ヶ月以上の長期培養を試みた。人工海水で作成したIMK培地で飼育した結果、細胞内の珪藻が減少し個体色が茶色から白っぽく変化してしまったものの、Amphistegina sp.は少なくとも12ヶ月生存し続けた。次に細胞内の珪藻を取り出すため、カミソリでAmphistegina sp.の殻を破壊し、珪藻を取り出した。有孔虫の殻に共生珪藻以外の藻類や原生生物が付着しているため、筆を用いてこれらの付着生物をよく取り除いてから殻を破壊すべきということがわかった。2021年度は十分量の個体を得ることができなかったので、取り出した珪藻が被殻を再生するまでのタイムラプスビデオ観察まで行えなかった。しかし、培養条件などが整ったため、2022年度には多くの個体を採集し、タイムラプスビデオ観察とRNA-seq解析を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度はコロナ禍のため、有孔虫が多く採集できる時期に出張することが難しかしく、実験に十分な個体を集めることができなかった。結局、2021年度に入手できた有孔虫は20個体のみで、目的としていたAmphistegina属の有孔虫は5個体しか手に入れることができなかった。しかし、これら5個体を使って有孔虫をできるだけ長く飼育する培養条件などを整備することができたので、2022年度はターゲット材料であるAmphistegina sp.をできるだけ多く入手し、実験を進めたい。 単細胞RNA-seqの準備として、SMART-seq2法を改良し、珪藻と同じくガラスの被殻をもつ有殻アメーバで予備実験を行った。凍結融解を繰り返し、硬い被殻からRNAを確実に抽出し、cDNAを合成・増幅させ、qPCRにより増幅ができているかどうかを確かめた。qPCRで増幅が確認できた細胞についてシーケンスを行った結果、3サンプルのうち2サンプルで良好にシーケンスを行うことができた。申請者の研究室ではこの実験系をルーティーンで動かすことができるようになったので、有孔虫細胞が入手でき次第、すぐにでも実験を進めることが可能だ。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は昨年度と比較して採集に行きやすい環境に戻っていることを期待し、精力的に採集を行う予定だ。琉球大学の藤田和彦教授の協力を得て、採集場所や時期をしぼり、より多くの有孔虫Amphistegina sp.の獲得を目指す。2022年度前半に実験に十分量の有孔虫個体を入手し、珪藻被殻形成のタイムラプスビデオ観察、珪藻培養株確立、RNA-seqを完了させたい。 また、発現量比較解析から得られた候補被殻形成関連タンパク質の機能解析のため、エレクトロポレーションによる遺伝子組換えが可能な珪藻Phaeodactylum tricornutumを購入予定だ。すでに所属大学に遺伝子組換え実験計画書を提出し、認証済みである。2022年度末から2023年度初めには実験が開始できるように準備を進める。
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Causes of Carryover |
2021年度はコロナ禍のため思うように採集へ行けなかったため、旅費として計上していた経費が使用できなかった。また、材料である有孔虫を手に入れられなかったことから、RNA-seq委託解析費用として計上していた経費も使用できなかった。上記の理由から、次年度使用額が生じた。
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