2023 Fiscal Year Research-status Report
Kleptoprotein bioluminescence in fish: Molecular mechanism of protein uptake and its evolutionary origin
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21K15144
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
別所 学 (別所ー上原学) 名古屋大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (80880434)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 盗タンパク質 / 生物発光 / キンメモドキ / ルシフェラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
発光魚キンメモドキParapriacanthus ransonneti(ハタンポ科)は、発光性甲殻類トガリウミホタルCypridina noctilucaのルシフェラーゼタンパク質を発光器に取り込むが、その動態は不明である。また、免疫組織化学による染色像より発光細胞の細胞質にルシフェラーゼが存在することから、細胞膜介在性の取り込み機構などによりルシフェラーゼが取り込まれていると予想される。すなわち、細胞膜に局在するトガリウミホタルルシフェラーゼ受容体の存在を想定して、これを同定することを目指す。 ルシフェラーゼ抗体を用意し、これを用いてキンメモドキの発光器由来のタンパク質粗抽出物に対して免疫共沈降法による受容体の同定を試みた。しかしながら、夾雑タンパク質が多く、有力な候補を得ることができなかった。 本年度は、ゲノム・トランスクリプトーム解析を行い、発光器特異的な遺伝子の探索を行った。PacBioシーケンサーによるロングリードを用いたゲノム解読を行なった。その結果、高品質なドラフトゲノム(N50=13M b)を得ることができた。作成したゲノム情報とすでにえら得ていたトランスクリプトーム情報を統合して解析することで、De novoトランスクリプトーム解析では解釈が困難なパラログの解析や、大きな遺伝子の解析を、ゲノム情報を整備することで解決した。今後は、発光器特異的遺伝子の機能解析を培養細胞系で発現させて行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度までの進捗をうけて、比較トランスクリプトーム解析を進め、ルシフェラーゼの取り込みに関与すると考えられる遺伝子の候補を得た。すなわち、発光器における発光細胞の細胞膜上でルシフェラーゼと結合する受容体の候補遺伝子をバイオインフォマティクス解析から見出した。しかし、当該遺伝子は非常に長く、ショートーリードを用いた遺伝子予測では全長を復元推定することができなかった。そこで本年度は、PacBioシーケンサーによるロングリードを用いたゲノム解読を行なった。その結果、高品質なドラフトゲノム(N50=13M b)を得ることができた。これを用いて遺伝子カタログを作成した。作成した遺伝子カタログに対して、トランスクリプトーム解析を行なったところ、上記と同じ候補遺伝子を得ることができ、再現性が担保された。 また、ハタンポ科に属する1種とハタンポ科に近縁なアオバダイ科の1種のトランスクリプトームデータを得ることができた。これらを用いて、キンメモドキのゲノム・トランスクリプトームデータと比較し、発光形質や盗タンパク質に関わる遺伝子群を網羅的に解析することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
ルシフェラーゼの受容体候補遺伝子の全長クローニングを行い、培養細胞系で発現させ機能解析を行う。機能解析のためにトガリウミホタルルシフェラーゼを受容体の相互作用相手として調製する必要があるが、当該タンパク質はシステインを多数含み一般的な大腸菌E. coli (DE) BL21などでの発現が困難である。そこで、メタノール資化酵母Pichia pastorisを用いてこれを発現する。作成したルシフェラーゼを細胞培養液に添加し、結合能をルシフェラーゼ活性(発光強度)を用いて評価する。 また、ハタンポ科に属する1種とハタンポ科に近縁なアオバダイ科の1種のトランスクリプトームデータを、キンメモドキのゲノム・トランスクリプトームデータと比較し、発光形質や盗タンパク質に関わる遺伝子群を網羅的に解析する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行により、申請者はサンプリング調査や研究打ち合わせといった出張を控えることを余儀なくされている。その結果、旅費の執行が困難となり、研究予算の効果的な活用が難しい状況が続いている。また、これにより共同研究者との共同研究や情報交換が遅れ、新たな知見や技術開発の進展に影響を与える可能性が懸念されている。 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いた場合に備えて、申請者はサンプリング調査や研究打ち合わせの再開を計画している。サンプリング調査によって新たなデータや材料を収集することで、研究の進展を促進できると考えられる。また、研究打ち合わせを通じて、国内外の研究者たちとの協力関係を構築し、共同研究や情報交換が円滑に行える環境を整える準備を行なっている。新型コロナウイルス感染症対策として、引き続き感染予防や衛生管理に努めながら、研究活動を推進する。
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Remarks |
NHK サイエンスZERO 「跳躍的進化のカギ!?生物の“盗み”戦略」出演 (初回放送日:2023年7月2日) 盗機能生物学 Biology of stolen phenotype 月刊「細胞」2023年 5月号 盗機能生物学
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