2023 Fiscal Year Annual Research Report
Morphological diversification of female internal genitalia mediated by male nuptial gift
Project/Area Number |
21K15152
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
橋本 晃生 杏林大学, その他部局等, 助教 (50836517)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 性選択 / 交尾器進化 / カミキリモドキ科 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、日本産カミキリモドキ科の一部の種で雌雄交尾器各部の相対成長を調べた。メス内部生殖器形態は体サイズに対して負の相対成長を示すか、または相関関係は認められなかった。オス交尾器においては多くの種で負の相対成長を示したものの、ナガカミキリモドキ属のごく一部の種では正の相対成長を示した。また、オスが与える精包の形状は系統によって球状のものと細長い筒状のものに大別でき、これはメスの交尾嚢内で棘が生える領域の広さや棘形態の違いと概ね対応していると考えられた。なお、野外では大きな精包を形成する種としない種との間で稀ながら交尾が観察されたが、このような交尾では精包を形成する種のオスの精包は交尾嚢に棘を持たない種のメスの内部生殖器を損傷し、逆の組み合わせを考慮しても中間・異常型の形成や遺伝子浸透はみられなかった。 つぎに、メスが産卵した卵に含まれる特定の防御物質の量を、交尾嚢に棘があり体サイズ等がよく似た近縁種間(シリナガカミキリモドキとカトウカミキリモドキ)で比較した。シリナガはより大きな精包を与え、メス交尾嚢の棘は長く本数も多いことから精包の消化効率がより高いと予想される。2種の卵抽出物をこの防御物質に特異的に誘引性を示す昆虫に呈示するバイオアッセイを行ったところ、シリナガの卵はカトウの卵よりも相対的に高い誘引性を示した。この種間の違いは、オスの精包に含まれる防御物質(婚姻贈呈物)の量的な違いを反映しているかもしれない。 最後に、日本産のカミキリモドキ科について13属45種を用いて、16S rRNAおよび28S rRNAを用いて最尤法に基づく分子系統樹を作成した。以上を総合すると、交尾嚢の棘および精包形成は複数の系統で独立に獲得され、さらにその中のごく一部の系統では精包の消化を巡って雌雄生殖器形質に特徴的な進化が起きてきた可能性がある。
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