2021 Fiscal Year Research-status Report
DPANN群に属する共生アーキア培養株の確立と共生機構の解明
Project/Area Number |
21K15153
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
酒井 博之 創価大学, 理工学部, 助教 (90845009)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | DPANN / アーキア / 寄生 / 酸性温泉 / 好熱好酸性菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生物界最小クラスの細胞を持つ寄生性アーキアとして知られるDPANNアーキアについて、培養株を可能な限り確立し、その共生機構を解明することを目的としている。酸性温泉試料を分離源として、1)メタゲノムDNA解析/16S rRNAアンプリコン解析を用いた生息域の探索、2)培養株の取得および公的菌株保存機関への寄託、3)宿主との共培養下におけるDPANNアーキアの生理性状解析および形態解析、4)全ゲノム解析、トランスクリプトーム解析およびプロテオーム解析を用いた共生機構の解明を実施する。 2021年度は、熱海、箱根、霧島の3か所において試料採取を実施した。採取した9つの温泉試料から環境DNAを抽出し、メタゲノム解析または16S rRNAアンプリコン解析を用いて各試料中の微生物群集構造を明らかにした。その結果、6つの試料中でDPANNアーキアが検出された。また、採取した試料を植種源として温度や炭素源の異なる様々な集積培養を行った結果、6つの集積培養液中でDPANNアーキアが培養されていることを確認した。加えて、研究室においてすでに確立されていたDPANNアーキアを含む集積培養液より、2株の新奇DPANNアーキアを、宿主と共に分離(純化)することに成功した。その後、Illumina NovaSeq および Oxford Nanopore MinION シークエンサーを用いたショットガンゲノムシークエンシングを実施し、2株の新奇DPANNアーキアおよび宿主の全ゲノム配列を決定すると共に、公的菌株保存保存機関 Japan Collection of Microorganisms に送り、寄託手続を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021度は、できる限り多くの温泉試料を採取して微生物群集構造解析を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、3か所(9試料)でしか試料採取を実施できなかった。一方で、当初予定していなかった集積培養などの培養実験に多くの時間を使うことができたため、DPANNアーキアを含む新たな培養系を取得することにつながった。加えて、すでに確立されていたDPANNアーキアを含む培養系から、2株の新奇DPANNアーキアをその宿主と共に分離(純化)し、全ゲノム配列を決定することに成功すると共に、公的菌株保存機関への寄託手続も開始した。以上のように着実に研究成果があがっていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に得られた集積培養液から、新たなDPANNアーキアを宿主と共に純化することを試みる。純化に成功した新奇DPANNアーキアおよび宿主については順次全ゲノム配列を決定するとともに培養性状を詳細に明らかにする。具体的には、(1) 光学および電子顕微鏡を用いた形態学的解析、(2) 生育温度範囲、生育pH範囲、炭素源利用性、独立栄養性、嫌気性などを調べる為の生理学的解析、(3) 16S rRNA遺伝子に基づく分子系統解析といった「原核生物の記載」に必要とされる解析項目について詳細な解析を行う。また、(4) 確立したDPANNアーキア培養株の宿主範囲についても調査する。温泉試料の採取が実施可能な場合には、更なる試料採取および集積/分離培養実験を実施し、引き続き、新たなDPANNアーキア培養株を確立することを試みる。
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