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2022 Fiscal Year Research-status Report

海流散布植物を基盤とする昆虫群集における生物間相互作用の維持・創出機構の解明

Research Project

Project/Area Number 21K15157
Research InstitutionLake Biwa Museum

Principal Investigator

大槻 達郎  滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 主任学芸員 (60760189)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2024-03-31
Keywords生物間相互作用 / 生物多様性 / 系統地理 / 昆虫 / 海流散布植物
Outline of Annual Research Achievements

クロマメゾウムシ(マメゾウ)はハマエンドウの種子に寄生するが、種子の発芽にも寄与する。また、寄生バチがこの昆虫に寄生すると、種子の発芽率は上昇する。これらの昆虫は、植物の世代更新や群集の安定に寄与するが、攪乱環境の海浜で3者の関係がどう維持されているかは不明である。本研究では、海流散布種子に寄生する昆虫群を系統地理解析することで、これらが種子と共分散しているかを検証する。種子は昆虫群の船となり、海浜の生物多様性の維持・創出に貢献するのか?本研究では、植食昆虫-寄生蜂の地理的遺伝構造の類似度を示すことで、これらの分散様式と2次寄生の維持・創出機構の一端を明示する。
現在マメゾウと寄生蜂のサンプルを収集範囲を広げているが、なかなか見つからない状況である。マメゾウの訪花行動の違いを観察しているが、飼育環境下では違いが見られなかった。というのも、太平洋側のマメゾウも萼片に穴が開いていれば、その穴から吸蜜することが明らかとなった。マメゾウの成虫は花の蜜を主食とするが、様々な種類の蜂蜜を餌として飼育しても産卵することはなかったが、ハマエンドウの花のある環境で飼育したマメゾウのみ産卵した。したがって、本種が世代を更新するためには、ハマエンドウが必要不可欠であることが明らかとなった。
寄生蜂に関しては、豆夾から成虫が出てきた後に同じ豆夾からアザミウマの仲間が出現した。そのアザミウマは花粉を摂食する種とは違う形態をしていたが、寄生蜂を捕食することが明らかとなった。本種はまだ同定できていないが、ハマエンドウの種子(豆夾)はマメゾウや寄生蜂だけでなく、他の昆虫を分散する「船」になっている可能性が示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

マメゾウと寄生蜂が思うように集まらないのが主な要因である。この状況を好転させるには、フィールド調査を増やすしかない。昨年度の調査では、種子(豆夾)からアザミウマを発見することができただけでなく、そのアザミウマが寄生蜂を捕食することが明らかとなった。フィールド調査と飼育実験を継続することで、海流散布植物は想像以上に多くの昆虫を分散させる「船」となりえることを知ることができた。海浜植生とその周りにいる昆虫との生物間相互作用については未知な事が多いため、フィールド調査で発見した昆虫についても分類・同定し、これまで同様に分子解析することで、海浜生態系の生物間相互作用と昆虫の分散様式について、新たな知見が深まると考えている。こうした調査を通じて、課題解決につとめるとともに、新たな研究を進めるための知見を広げていきたい。

Strategy for Future Research Activity

分子解析に必要なサンプル数や集団数を獲得すべく、フィールドへ行く回数を増やす必要がある。また、サンプル数を増やしてから次世代シーケンサーの解析データを全て合わせるつもりであったが、今年度でうまく採集できないようであれば、現在取得したデータのみで解析を進めていくことも考えている。
寄生蜂を捕食するアザミウマを発見したことから、ハマエンドウの種子(豆夾)には多くの昆虫が生息し、2次寄生者を補食するアザミウマまでいることが明らかとなった。ハマエンドウの開花時期に、花の中には複数種のアザミウマが生息していることは確認済みである。これまでマメゾウを捕獲するために、豆夾を飼育箱に入れて観察をしているが、寄生蜂が見つかったところからのみ、アザミウマが出現している。まずは開花時期に花の中にいるアザミウマを同定し、昆虫食のアザミウマがいるかを確認するとともに、寄生蜂がいない地域の豆夾からアザミウマが発生するかどうかについても調査を進めていく予定である。

Causes of Carryover

昨年度は調査の回数が少なかったため、今年は調査回数を増やす予定である。
また、2年間で進めていない作業を次年度に進めなければいけないため、次年度使用額の一部は人件費・謝金に充てる予定である。

  • Research Products

    (5 results)

All 2023 2022 Other

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results) Book (1 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] 琵琶湖岸砂浜の甲虫相2022

    • Author(s)
      八尋克郎, 武田滋, 大槻達郎
    • Journal Title

      日本生物地理学会会報

      Volume: 77 Pages: 3-17

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 琵琶湖岸における希少種の生息・生育地保護区で見られる植物の季節変化2023

    • Author(s)
      大槻達郎・武田滋・西田謙二
    • Organizer
      第22回日本植物分類学会大会
  • [Presentation] 琵琶湖岸の希少植物保護区周辺の草本群落間で見られる種組成の違いについて2023

    • Author(s)
      大槻達郎・西田謙二
    • Organizer
      第70回日本生態学会大会
  • [Book] 琵琶湖の生物はいつ、どこからきたのか?2022

    • Author(s)
      西野 麻知子
    • Total Pages
      360
    • Publisher
      サンライズ出版
    • ISBN
      978-4-88325-779-9
  • [Remarks] 琵琶湖岸の砂浜に45科341種の甲虫が生息することが新たに分かりました

    • URL

      https://www.biwahaku.jp/2023/02/45341.html

URL: 

Published: 2023-12-25  

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