2023 Fiscal Year Annual Research Report
海流散布植物を基盤とする昆虫群集における生物間相互作用の維持・創出機構の解明
Project/Area Number |
21K15157
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Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
大槻 達郎 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 主任学芸員 (60760189)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生物間相互作用 / 生物多様性 / 系統地理 / 昆虫 / 海流散布植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
硬実種子のハマエンドウは、海流に乗って長距離散布するマメ科植物である。本種の発芽には昆虫が関与しており、海浜ではクロマメゾウムシ(マメゾウ)が、内陸の琵琶湖岸ではスナゴミムシダマシ(スナゴミ)が種皮に傷をつけることで種子は発芽する。また、種子に寄生するマメゾウの幼虫は、サムライコガネバチ等に寄生されると種子内で絶命し、結果として種子の発芽率は上昇する。これらの昆虫は、植物の世代更新や群集の安定に寄与するが、海浜や湖岸における生物間相互作用がどのように異なるかは不明である。今年度も寄生蜂のサンプルを収集範囲を広げたが、ほとんど見つからなかった。そこで、最終年度は琵琶湖岸に隔離されたハマエンドウの種子発芽に関する昆虫相の相互作用を明示し、海浜群集とは異なる群集の維持機構の一端を明らかにした。 スナゴミは種子や枯れ葉を摂食する腐食性甲虫で、ハマエンドウの豆果を摂食する際に種子にも傷をつける。この甲虫の幼虫は、湖岸ではアリジゴクによって捕食される。そのため、砂地が多くアリジゴクの巣が多いところでは、スナゴミ個体数は少ない傾向にある。湖岸のハマエンドウは滋賀県の絶滅危惧種に指定されており、生育地では保全活動の一環として2022年頃から月に一度の除草作業が再開された。その結果、コロナ禍には少なかったアリジゴクの巣が増加した。また、2023年にはスナゴミムシダマシが激減した。アリジゴクの巣にはスナゴミの幼虫の残骸が多く残っていたため、アリジゴクがスナゴミを捕食した結果、スナゴミの個体数が減少したと推測された。本調査から、保全活動動が絶滅危惧種の世代更新を妨げる可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)