2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K15160
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 諒 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (80812982)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 種分化 / 生物系統地理 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
交配前隔離の非対称性は広範な分類群の近縁種間でごく一般的に観察される。このパターンを進化的帰結として捉え、その原因となるメカニズムを解明するため、野外オオヨモギハムシ集団のゲノム解析および数理モデルによる理論解析を実施した。 まずゲノム解析では、特定集団の全ゲノムシーケンスによるリファレンスゲノムを作成したうえで、交配前隔離に非対称性のある集団間ペアの遺伝的多型情報をRAD-seqデータより得た。過去の集団サイズ遷移を推定した結果、一部の集団で個体数の著しい減少を経験していたことが判明した。またそれらの集団は、同類交配の強度を測定する実験において、メスが自種のオスと同様に他種のオスを受け入れてしまう傾向にある集団であることが明らかとなった。現在は、交配前隔離に非対称性のある3集団の各組み合わせについて、感覚器である触角を含む頭部および前脚のRNA-seqが完了しており、今後は隔離メカニズムの推定に向けた発現変動遺伝子解析を行う予定である。 続いて、性淘汰の量的遺伝モデルの枠組みを拡張し、集団サイズを考慮した同類交配進化モデルを構築した。ここで集団サイズの影響は、遺伝的分散と交配成功率の2つに影響を与えると仮定した。単純化した解析では、ランナウェイ型の形質分化による種分化の条件を導出することができた。一方で、この導出された条件では遺伝的分散(共分散)に強く依存することも判明した。今後は先のゲノム解析によって推定されたシナリオを再現する、集団サイズ依存的な条件の探索を目標として解析を展開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オオヨモギハムシの野外個体を用いたゲノムシーケンスがすべて完了し、残すはバイオインフォマティクス解析のみとすることができた。数理モデルについても基本的な理論の構築と解析までは完了した。今後当初の予定通りの解析を実施できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノムデータを用いたバイオインフォマティクス解析、および数理モデルの詳細な解析を実施する。その後、申請者先行研究の交配実験結果データを合わせて論文の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
次世代シーケンス受託解析が想定より安価に実施可能であったこと、またコロナ禍において国際学会出張がキャンセルになったことが影響し、次年度使用額が生じた。次年度において追加ゲノム解析および出張経費として使用を計画している。
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Research Products
(5 results)