2022 Fiscal Year Research-status Report
データ同化による数理モデリングと統計モデリングの融合
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21K15170
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Research Institution | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等) |
Principal Investigator |
大久保 祐作 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等), データサイエンス共同利用基盤施設, 特任研究員 (60871100)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 統計モデル / 決定論的モデル / 数値計算 / 生態学 / モデル選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
生態学のあつかう自然現象を説明するには、主に二つのアプローチが考えられる。ひとつはロトカ=ヴォルテラモデルに代表される数理モデルで、もうひとつは階層ベイズモデルに代表される統計モデルである。いずれも生態学を支える礎で同じ「数学」という道具に基づいているにも関わらず、両者には著しい溝がある。したがって異なる2つの数理アプローチを「融合」させることは、生態学がフィールドの複雑な現象を理解する上で不可欠である。特に数理モデルの知見を近年発達の著しい統計モデルに組み込むことは、分析結果の解釈性や一般性を高めるために有効な戦略であると考えられる。
代表者は前年度までに系統比較法におけるBSDSモデルを提案し、これが集団遺伝学に基づく進化シミュレーションと確率過程論に基づく統計モデルの”折衷”として解釈できることを明らかにした。本年度では、このモデルを数理的に改良するとともに実データへの応用を念頭に数理的・統計的な性質を明らかにすることを目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに提案した枝特異的方向性選択モデル(BSDS)を大幅に改良した上で、いくつかの重要な統計的性質を明らかにした。特に1)ランダム効果モデルと組み合わせることで、各生物種の形質値に測定誤差を伴う場合に対応できるようになった。2)祖先形質値の推定量について統計的一致性がないことを証明し、推定量の分散が従うオーダーを解明した。
以上の成果は進化生物学の専門誌である”Evolution”に採択された(Ohkubo, Kutsukake Koizumi 2023)。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究者との議論を進め、手法の改良を行う。特に哺乳類の寄生虫群集データへの応用を念頭に置き数値計算に基づくモデル選択法の開発を行う。
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Causes of Carryover |
前年度の引き続き新型コロナウイルスの流行により海外渡航が大きく制限されたことに加え、急激な円高等で計算機の購入を見送ったため。
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Research Products
(5 results)