2023 Fiscal Year Research-status Report
古人骨から新規手法により読み解く先史時代の人々の寿命
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21K15174
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 智彦 京都大学, 総合博物館, 准教授 (40826244)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 古人口学 / 先史時代 / 寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、犬歯歯髄腔の狭窄度合を年齢指標とした新しい手法を用いて、縄文時代や弥生時代の人々の寿命(主に成人後の余命)を男女別に推定することを最終目標としている。昨年度まで、犬歯のサイズから性別の事後確率を導くことにより集団の生存曲線を男女別に推定する手法を開発していた。本年度はこの手法を用いて縄文時代人の(15歳以降の)生存曲線並びに余命を男女別に推定した。まずは予備的な分析結果を10月の日本人類学会大会にて発表した。その後、縄文標本の犬歯に加えて鎖骨の状態からの年齢情報も加える手法へと改良し、推定幅の比較的狭い(=より精密な)推定へと改良することができた。推定結果は、縄文時代において女性の15~40歳の死亡率が男性よりも高いというものであった。この結果を3月の米国生物人類学会大会にて発表した。一方で、本年度の研究会などでの議論を通じて、歯髄腔の狭窄について咬耗や咬合圧などの年齢以外のファクターについても今一度精査する必要性が認識された。これは、本研究手法の根幹部に係わるものであり、本研究手法を弥生時代などのより広い対象に範囲を広げる前に解決すべき問題である。これらファクターについては年齢既知の現代人標本や、左右で咬耗状態が異なる特殊な個人の分析などを通じてある程度の検証は行っていたが、より多くの標本数で明瞭な研究結果として公表することが、本研究結果の信頼性を担保するために必要であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
必要最小限の下顎犬歯CTデータは収集できているが、より多くのデータを収集することが望ましい。
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Strategy for Future Research Activity |
歯髄腔の狭窄について咬耗などが与える影響について精査を行う。
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Causes of Carryover |
旅費の支出が予定よりやや少なかった。次年度のデータ収集等の旅費として使用予定。
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