2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K15180
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原田 雄仁 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (50887825)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 幹細胞 / 細胞周期 / Notchシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
胎生期において、神経幹細胞は盛んに増殖し多くの分化細胞を供給することで脳を構築する。一方で、成体の脳にも神経幹細胞が存在し、新たに分化細胞を産むことで脳の恒常性維持や学習・記憶に貢献する。しかしながら、成体まで残る神経幹細胞が、発生過程でどのように選ばれ、幹細胞として長期維持されるかは不明であった。これまでに我々は、大脳脳室下帯の成体神経幹細胞は、盛んに増殖する神経幹細胞ではなく、胎生早期から分裂を抑制した神経幹細胞に由来することを見出し、分裂の抑制が成体神経幹細胞の形成に必要であることを報告した (Furutachi et al., Nat. Neurosci. 2015)。次に、分裂の抑制がいかにして成体神経幹細胞の系譜の決定に貢献するかを探索し、分裂の抑制がNotchシグナルの下流でHey1を選択的に発現誘導することで、幹細胞の長期維持と成体神経幹細胞の形成に貢献することを初めて明らかにした (Harada et al., Nat. Commun. 2021)。胎生期の盛んに増殖する神経幹細胞では、Notchシグナルの下流でHes1/Hes5が振動発現することで幹細胞の増殖と分化を制御する。興味深いことに我々は、Hey1が(Hes1/5と異なり)振動発現しないことを示唆する結果を得た。このことから、振動発現しないHey1と振動発現するHes1/5の使い分けこそが、成体神経幹細胞の系譜と脳の構築を行う系譜を分ける中心メカニズムである可能性が考えられる。そこで本研究では、胎生期神経幹細胞におけるHey1の発現ダイナミクスと上流制御および機能について、Hes1/5と比較しながら検討し、成体神経幹細胞が形成される初めのステップを解明することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時において投稿中であった研究課題において、査読を通過し無事論文掲載に至った。更なる発展につながる実験の準備も進んでいる。以上から本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでHey1の安定的な発現動態が成体神経幹細胞の系譜に貢献することを示してきた。今後は、Hey1タンパク質の発現動態を引き続きライブイメージングにより観察する。さらに光刺激によりHey1の発現動態を人工的に制御する。これらの実験により、Hey1タンパク質が本当に安定的に発現するのか、そのときに必要な要素は何か、安定的に発現することが幹細胞にどのように影響を与えるのかを検討したい。
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Causes of Carryover |
3月の納品に間に合わなかった試薬類の購入に使用するため。
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