2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K15182
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
佐藤 博文 日本医科大学, 医学部, 助教 (40779435)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 線虫 / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、動物が過去の経験に基づいて、感覚情報の処理機構を調節するメカニズムを明らかにすることを目的としている。昨年度に実施した研究成果としては、まず線虫を用いてこれまで行ってきた4Dイメージングやシミュレーションなどの実験の結果について、より高度な解析を実施し、その意義を明らかにした。これにより、全脳レベルでの時系列イメージングデータを基にして、個々の神経の活動をクラスタリングすることが可能となった。また全脳レベルでの神経活動データを独立成分分析などの手法で解析することにより、いくつかの重要なコンポーネントを見出した。全脳レベルでの神経活動を俯瞰して見た場合、個体ごとの差が非常に大きかったものの、独立成分分析、時間遅れ埋め込み、行列分解などの手法を組み合わせた数理的解析を行うことにより、個体間で共通する神経活動モチーフを抽出することに成功した。また過去の神経活動を基にその後の神経活動を予測する時系列予測モデル(gKDR-GMM)を用いることで、過去の全脳レベルの神経活動から未来の全脳神経活動を予測するシミュレーションを行うことが可能になった。これにより、神経系を構成する各神経細胞間の接続の強さを推定することができるようになった。シミュレーションの結果、線虫の動きを制御するための主要な神経細胞間での接続は強くかつ固定的であることが分かったが、一方でそれらの神経群と感覚神経群との相互作用は比較的弱くまた可変的であることが予測された。またシナプス接続だけでなくギャップ結合の重要性も確認された。さらに哺乳類細胞を用いた実験系の立ち上げも完了し、次世代シーケンス解析によるデータが得られつつある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、線虫を対象とした行動実験や解析はほぼ完了し、その成果が論文としても発表されている。具体的な成果としては、線虫の経験塩濃度依存的な行動調節機構の全貌が明らかになり、また全脳レベルでの神経活動の測定、解析、解釈が可能となった。また研究の発展として哺乳類細胞を用いた実験系も立ち上がっており、当初の計画通り順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は主に哺乳類細胞を用いた実験系において、線虫を用いた実験から重要性が示唆された遺伝子を対象として各種条件下での実験を行う予定である。これにより、線虫で明らかになった様々な遺伝子の機能や制御機構が、普遍的なものであるかを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルスの影響は以前よりも大きく軽減されたものの、これまでに実施できなかった実験が後ろ倒しになっており、そのため次年度使用額が発生することになった。また次年度では、高等動物を対象とした実験や次世代シーケンス解析などより発展的な研究を計画しており、それらのために助成金は使用される予定である。
|
Research Products
(2 results)