2021 Fiscal Year Research-status Report
シナプス前部からの直接パッチクランプ記録によるカンナビノイドの作用点の解析
Project/Area Number |
21K15189
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井下 拓真 京都大学, 理学研究科, 助教 (00880337)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経伝達物質放出 / カンナビノイド / プルキンエ細胞 / パッチクランプ記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経の神経伝達物質放出の多くはカンナビノイドによって負に制御されている。 その仕組みとしてカンナビノイドがシナプス前部へのCa2+の流入を抑制することが示唆されている。しかし、シナプス前部へのCa2+流入以降の伝達物質放出の過程にカンナビノイドが影響するか否かは不明のままである。本研究では培養小脳プルキンエ細胞の軸索終末から直接パッチクランプ記録することでシナプス前部におけるカンナビノイドの作用点とその分子メカニズムを明らかにすることを目指した。カンナビノイド受容体として同定されているCB1とCB2のアゴニストを投与したところ、シナプス前部へのCa2+流入に有意な変化は認められなかった。また、プルキンエ細胞の出力シナプスにおいてCB1、CB2アゴニスト投与によるシナプス伝達の有意な変化は認められなかった。これらの結果は、プルキンエ細胞軸索終末にCB1やCB2が存在しない、または、シナプス伝達を抑制しないことを示唆している。そのため、内在性の受容体の影響が無視できるモデルシナプスとしてプルキンエ細胞出力シナプスが利用できる可能性がある。つまり、カンナビノイド受容体をプルキンエ細胞軸索終末に強制発現させることで各受容体サブタイプそれぞれの機能を調べられると期待できる。 一方で、近年同定されたカンナビノイド受容体でCB1、CB2とは異なる受容体のアゴニストを投与したところ、プルキンエ細胞出力シナプスでの情報伝達が減弱した。このとき、シナプス前部へのCa2+流入に有意な変化は認められなかった。これらの結果は、これまで知られているシナプス前部へのCa2+流入を抑制するカンナビノイドの作用とは異なる、シナプス伝達調節の新しい仕組みの存在を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始当初、カンナビノイド受容体アゴニストを高濃度で使用していた。その濃度ではカンナビノイド受容体非依存的にシナプス前部へのCa2+流入を減弱する効果が表れることが、しばらくしてから明らかになった。そのため、カンナビノイド受容体非依存的なCa2+流入減弱が起こらない適切なアゴニストの濃度でデータを取り直す必要があった。したがって、プルキンエ細胞軸索終末におけるカンナビノイドの調節作用を正しく評価することに想定以上の時間を要してしまい、カンナビノイドの作用点の同定が未達成となっている。一方で、近年同定されたカンナビノイド受容体がシナプス伝達に影響することを示唆する結果が得られており、計画立案当初は予想していなかった研究展開が期待できる状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果から、プルキンエ細胞軸索終末には内因性のCB1、CB2が存在しない、もしくはシナプス伝達を減弱しないことが示唆された。そのため、プルキンエ細胞軸索終末をモデルシナプスとして利用し、アデノ随伴ウイルスによってカンナビノイド受容体を強制発現させることで、各受容体サブタイプを活性化させたときのシナプス前部への影響を調べる。 また、近年同定されたカンナビノイド受容体がシナプス伝達に影響することが明らかになり、そのシナプス伝達調節の仕組みが従来考えられているカンナビノイドの作用メカニズムと異なることが示唆された。そこで、この新規カンナビノイド受容体がシナプス伝達を減弱する仕組みや分子メカニズムについて明らかにすることを、CB1やCB2の機能解析と平行して行う。
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Causes of Carryover |
半導体不足などの影響で機器の値上げがあり、当初購入予定だった機器よりグレードを下げたものを購入した。そのため予定との差額が生じ、次年度に持ち越すこととなった。次年度使用額と翌年度分の助成金と合わせて機器のアップグレードを図る。
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