2021 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞のin vivo長期動態追跡による大脳皮質モジュール構築機構の解明
Project/Area Number |
21K15199
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
中川 直樹 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (30835426)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 神経回路形成 / in vivoイメージング / バレル皮質 / 単一細胞動態追跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大脳皮質第4層(L4)神経細胞がモジュール(単位回路)ごとにクラスターを形成するマウス体性感覚野バレル回路の特長を利用して、個々の神経細胞が生後発達期に所属すべきモジュールを決定する過程を“細胞の動き”から読み解くことを目指す。2021年度は、二光子顕微鏡in vivoイメージングを用いて、L4神経細胞のバレル形成過程での動態追跡を行い、基本的な細胞移動パターンを明らかにすることを目標とした。 バレル形成期にあたる生後3日齢(P3)からP6までの足掛け4日間、24時間間隔でイメージングを行い、バレル皮質L4神経細胞の空間分布を座標化した。バレル形成に寄与する能動的な細胞移動成分を抽出するための細胞位置補正法を開発し、各タイムポイントのL4神経細胞の座標を補正した。所属モジュールの選択過程を理解する上で重要と考えられる、各バレルの境界線付近のL4神経細胞に着目して移動の距離や方向性を解析した。これに加えて、L4神経細胞の動態に神経活動が果たす役割の解明を目的として、L4神経細胞の活動操作実験の実験系構築を進めた。神経活動操作として、NMDA型グルタミン酸受容体の機能欠損、および内向き整流性カリウムチャネルKir2.1の過剰発現を用いることとした。現在、予備的検討として、両手法によって実際にL4神経細胞のバレル形成に異常が生じるかどうかについて組織学的解析を進めており、今後神経活動操作を施した条件でin vivoイメージングを行い、細胞動態に生じる変化を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二光子顕微鏡による神経細胞の長期in vivo動態追跡法を用いて複数のマウス個体からイメージングを行い、バレル形成期の各タイムポイントにおけるL4神経細胞の空間座標データを取得した。得られたデータをもとに、当初設定していた2021年度の達成目標である「バレル形成過程におけるL4神経細胞の基本的な細胞移動パラメータの解析」を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、細胞移動パラメータの解析手法に適宜改善を加えながら、得られたL4神経細胞の細胞移動パターンがどのようにバレル形成に寄与するかについての意義づけを行う。また当初の計画に従って、L4神経細胞の神経活動を操作した上でin vivoイメージングを行い、L4神経細胞の細胞動態と神経活動との関連を解析する。また別の観点として、バレル形成には、L4神経細胞の細胞移動に加えて領域特異的な細胞死が関与する可能性があり、追加で解析する必要があると考えた。そこで、in vivo動態追跡イメージングを応用して、領域特異的な細胞死の解析を並行して行う。併せて、発達期バレル皮質における細胞死の経時変化について、アポトーシスマーカーを用いた免疫組織染色によって検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由:物品費については実験の効率化により当初予定していた金額より下回った。旅費については、参加を予定していた日本神経科学大会(神戸)をはじめとした各種学会が新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からオンライン開催となったため、予定していた金額より下回った。
使用計画:次年度の使用額は、当初予定していた計画、および追加で計画した細胞死解析の遂行に使用するとともに、研究成果の発表を積極的に行う。
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