2021 Fiscal Year Research-status Report
運動学習時にシナプス長期増強・抑圧を引き起こす運動野神経回路の描出
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21K15200
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
孫 在隣 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 特任助教 (40780333)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 運動学習 / シナプス可塑性 / 大脳皮質運動野 / マウス / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物は学習により環境に適応するが、その際中枢神経系では神経回路の再編成が行われている。大脳皮質運動野は動物の運動指令を皮質下に出力する領域であるが、運動学習中にシナプスの可塑的変化が認められている。しかし、その変化を認めるシナプスに対する入力が、皮質―皮質間シナプスか視床―皮質投射シナプスのどちらに現れているのかについては現段階で不明である。そこで我々は、遺伝子改変マウスを用い、蛍光標識された第5層錐体細胞を2光子顕微鏡下で生体観察し、そのスパインの新生・膨化・縮小・消失といったシナプス動態を評価した。さらに、それらスパインへシナプス結合する軸索の由来を、免疫組織化学等により同定した。これにより、スパインの新生・消失など、神経回路を大幅に改変する動態と、膨化・縮小といった、シナプス強度の変化については、神経回路ごとに異なる挙動を示すことが判明した。 スパインの新生は、皮質―皮質間シナプスが視床―皮質投射シナプスに先行して活性化するものの、それは一時的であり、新生後すぐにまた消失することがわかった。一方、視床―皮質投射シナプスはその出現頻度こそ低いものの、その後長く安定し、さらにそのスパインは増大・成長していくことがわかった。これは、高次運動野からのトップダウン信号が学習初期には重要であり、一度獲得した技能については皮質下との連絡がその役割を引き受けていくことを示唆する所見であった。これにより、新たな神経回路が形成されるというダイナミックな脳の可塑性は、そのシナプス結合の種類によって時間的に異なった挙動を示すという新たな知見が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、皮質―皮質間シナプスか視床―皮質投射シナプスそれぞれのスパインの新生・消失といった動態についての観察は終了し、論文の査読を経て修正中である。スパインの膨化・縮小といった可塑性についての評価は、さらなるサンプル数を重ねるべく画像解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度中を目処に、2光子顕微鏡画像の解析を進める。また、同時に電子顕微鏡観察を行い、膨化・縮小を示すスパインに入力する軸索の特性を明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
計画では旅費を申請していたが、新型コロナウイルスの関係で出張がほぼ制限されていた。次年度、学会等がオンサイトで開催されればそれを充当させる予定である。
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