2021 Fiscal Year Research-status Report
ROCK阻害薬を用いた顔面神経麻痺新規治療法の開発
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21K15201
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
杉山 元康 山形大学, 医学部, 客員研究員 (60637255)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 顔面神経麻痺 / 再生医療 / ROCK阻害薬 / 新規治療法開発 / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
顔面神経麻痺の重症例においては、既存のいずれの治療法でも治癒率が低く、新たな救済治療法の開発が望まれている。当科では新たな治療法の開発に臨んでおり、IGF-1 (Insulin-like growth factor 1) をオリジナルの側頭骨内顔面神経障害動物モデルに投与することで、顔面神経の回復が促進されることを以前に報告した。 本研究では、ROCK(Rho associated coiled-coil forming kinase) 阻害薬を当科で作成済みの側頭骨内顔面神経障害動物モデルに導入し、回復効果を検証することを目指している。 令和3年度は、既に当科でIGF-1の研究で開発済みであったモルモット側頭骨内顔面神経障害モデルに、ROCK阻害薬を再生因子として導入した場合に、コントロール(生理食塩水投与)群に比べ、顔面神経の回復がどれだけ促進されるかを評価する研究をすすめた。評価については、当科において確立済みの、運動評価、電気生理学的評価、組織学的評価の三項目で効果を確認した。運動評価は、閉眼率を定義し、ビデオカメラで撮影しスロー再生をすることでより客観的に評価した。電気生理学的評価は、誘発筋電図を用いて行い、組織学的評価は、免疫染色を施行し軸索の数を評価した。 現在のところ、ROCK阻害薬投与群において、コントロール群と比べて閉眼率、筋電図においてAmlitudeが有意な回復を認めた。組織学的評価は現在進行中である。 引き続き、ROCK阻害薬の投与量などを変更して、来年度も検討を続けていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
側頭骨内顔面神経絞扼モデルを用いて、ROCK阻害薬の顔面神経回復効果を検討中であり、現在のところIGF-1をしのぐ回復効果を認めている。 まだ結論は出ていないが、研究の進捗状況としては、概ね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度には、3年度より引き続き、ROCK阻害薬の顔面神経回復効果の評価を行う。また、ROCK阻害薬の投与濃度を変更し、ROCK阻害薬の至適濃度や副作用の有無の検討を行うとともに、顔面神経回復効果を証明するため、シグナル経路の検討も行う。ROCK阻害薬により活性化されるシグナル経路の検討は、Rho、Rac、Cdc42のdetection kit (Cytoskeleton社) を用いて行う。 さらに、令和5年度には、4年度より引き続き、ROCK阻害薬の効能の評価を行う。また、ドラックデリバリーシステムについて、ROCK阻害薬を徐放用基材 (ゼラチンスポンジ)を用いて投与した場合と、鼓室内チューブによる連日投与を行った場合での有効性の違いを比較検討する。動物モデルでの、鼓室内チューブによる連続投与に成功すれば、これも世界で初めての報告となる。
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Causes of Carryover |
学会発表などに行く機会が、当初予定していたよりも少なかった。 来年度以降、学会発表の機会も増えると予想されるので、繰り越して使用することとする。また、モルモットや備品の購入もさらに必要な数が増えると予想されるので、物品費としても使用予定である。
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