2022 Fiscal Year Research-status Report
ROCK阻害薬を用いた顔面神経麻痺新規治療法の開発
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21K15201
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
杉山 元康 山形大学, 医学部, 客員研究員 (60637255)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 顔面神経麻痺 / ROCK阻害薬 / 側頭骨内顔面神経障害動物モデル / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
顔面神経麻痺の重症例においては、既存のいずれの治療法でも治癒率が低く、新たな救済治療法の開発が望まれている。そのため、当科では新たな治療法の開発に臨んでおり、オリジナルのモルモット側頭骨内顔面神経障害動物モデルを作製した。この動物モデルを用いて、ROCK (Rho associated coiled-coil forming kinase) 阻害薬の顔面神経麻痺治療効果を検討した。 4週齢のモルモットに全身麻酔をかけ、左耳後部から側頭骨内顔面神経を露出し、鉗子で10分間障害した。その後、徐放用基材にROCK阻害薬と生理食塩水を添加し、障害部位に留置して傷を閉じた(各群n=6)。術後8週目をエンドポイントとし、当科において確立済みの、運動評価、誘発筋電図を用いた電気生理学的評価、免疫染色による組織学的評価の三項目で評価を行った。ビデオカメラを用いて毎週閉眼の程度を評価し、8週目に閉眼の程度と完治率、鼻毛筋の筋電図測定、顔面神経採取・免疫組織化学による組織評価を行った。 その結果、最終閉眼率と閉眼の完治率はROCK阻害薬群で有意に高い結果となった。また誘発筋電図を用いた鼻毛筋の評価では、AmplitudeとLatencyはROCK阻害薬群で有意に改善した。更に免疫組織化学による組織評価では、ROCK阻害薬群では軸索数が有意に多かった。 また、Sudan Black染色を用いて髄鞘再生の病理学的定量評価が行えないかを検討しており、過去の標本を用いて試行中である。現段階で定性評価は可能と考えており、今後更なる検討を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ROCK阻害薬の顔面神経回復効果があることは、概ね確認できる結果が出せていると考えている。 今後は、実臨床での応用に向け、Rho/ROCK経路の分子生物学的検討や、ROCK阻害薬の至適 濃度や副作用の有無の検討を行うことが必要であると考えている。 また、髄鞘再生についても、定量的な評価が行えるか、引き続き検討を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
実臨床での応用に向けて、ROCK阻害薬の投与濃度を変更し、ROCK阻害薬の至適 濃度や副作用の有無の検討を行うとともに、シグナル経路の検討も行う。シグナル経路の検討に関しては、RT-qPCRやELISAを用いて、顔面神経におけるRho/ROCK経路の分子生物学的検討を加える予定である。また、髄鞘再生についても、定量的な評価が行えるか、引き続き検討を行っていく。 さらに、余力があればドラックデリバリーシステムについて、ROCK阻害薬を徐放用基材 (ゼラチンスポンジ)を用いて投与した場合と、鼓室内チューブによる連日投与を行った場合での有効性の違いを比較検討する。動物モデルでの、鼓室内チューブによる連続投与に成功すれば、これも世界で初めての報告となる。
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Causes of Carryover |
学会発表などに行く機会が、当初の想定よりも少なかった。 来年度以降、学会発表の機会も増えると予想されるので、繰り越して使用することとする。また、モルモットや備品、シグナル経路解析や髄鞘評価に用いる抗体の購入もさらに必要な数が増えると予想されるので、物品費としても使用予定である。
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